162 絶望と後悔と懺悔と
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―回想・直円について―
[本を手に、学の深い家族の元を訪れる。]
ごめんなさい。少し……解らない所が、あって。
教えてもらっても、良い?
[あの夜を境に、直円はひどく変わった。
それを殊更に喜び、月影や黒百合を礼賛するようになった。
けれど自分も変わったのだと思う。頭を垂れるのは同じだし、
与えられて難しい本も読むようになった]
この、隠れ切支丹という人たちがお祈りをする事は、
どうして、禁止されていたの?
[自分だって怖いだろうに、任せたまえと言ってくれた。
自分達家族に『生きている』事を教えてくれたのに、
吸血鬼に媚びる裏切り者だと、特に人間からの蔑みは強く
家族を馬鹿にする奴らに身の程を知らせた事もある]
……それと、これは、なんて読むのかな。
[少年にとっては難しい字が書かれた紙だった。
――それでも、生きてほしかった。*]
-回想-
あぁ……別にぃ。教えてあげますよぉ。
[件の日、以来。直円は努めて「狂って」きた。
本来の自分なら肯定できないことも、
「架空の自分なら」肯定できるんだ、と言わんばかり。]
隠れ切支丹はぁ。ひとぉつ。「相容れぬ」ものがあったんだ。
幕府の身分の秩序を重んじる考え、切支丹の神のもとに平等という考え。
それが決定的に相容れぬものだったぁ。
ふたぁつ、権力者がね。「怖がった」からだよ。
知ってるう?仏教徒もさぁ、一丸となってぇ、権力者を追い出してぇ。
自分たちで国を治めたことぉ、あったろぉ。
「同じ思いの民草たち」にはね、力がありますからぁ。
しかも、その「思い」は根深いですからぁ。
「捨てたふり」をしても、心の中には強く残っている。
……「思い」は隠れても忍んでも、強い!
[一瞬だけ、赤い瞳には狂った様子ではなく、
確かな「……」が伺えるよう。]
……冀望も「きぼう」ですよ。
[優しく、そう「優しく」答えた**]
ふ、…ふふ、あははははははは!
いいね。ここまで来るともうどうでもよくなってくるよ
[もう笑い声しか出てこない。
どうして。どうしてここに皆いるんだ]
俺が…俺たちが何したんだよ。
お前達に、何したってんだよ!
[ホリーへか、トルドヴィンへか。きっと彼らにとっては愉悦にしかならないだろう血の苦味が赤に滲む]
……さぁ、どうしてかしらね。
[愉しげな声が響く。]
乗り越えなさい。
みんな殺して乗り越えて。
そうしたら――
直円。
あたしのように遊ぶのは構わないわ。
けど、もしかして貴方。
昔なじみは傷つけたくないとか思ってるんじゃない?
[先ほどまでの先頭の様子を思い返しながら。]
悩むから辛いのよ。
いつもの訓練のように、相手の頭ごと潰してあげればいいのに。
………。
[………。]
違いますよぉ。僕はぁ、じっくり舐ってやろうって。
そう思っているだけですからぁ。
顔が傷つくとぉ、折角の苦悶がぁ。わかりませんからぁ。
[この話し方のときはたいてい。そういうことだ。]
──…そうしたら、何
[ホリーの優しい声は今は何よりも黒く暗く聞こえる]
もう悩まなくて良くなるわ。
誰かを殺したりするのも、きっと愉しくなる。
そうしましょうよ。
[そう告げる声は愉しげだった。]
―回想・理依について―
[喉元に円形の刃が突き付けられた。
一拍おいて引き戻されたそれに、ふうと息をつく]
……もう一本、お願いします。
[理依は根気よく手合せに付き合ってくれた。
自分にはこれ以上ない鍛錬だったと思うけれど、
彼にはどうだったのか、良く解らない。
勝てるようになってほしい、の意味も]
――――、……
[素直に尋ねられれば良かったのだろうか。
けれど、にこにこと誰にでも接していた理依の面影は、
他愛ない話をしなくなり、どこか線を引くように
独りでいたがっている、ようにも見える。
ただ、そうなりたい、とは思った。
もっと強く、いつか届くようにと望んだ。
何に届けと伸ばすのか、自覚のない切っ先を、
刺すように鋭く*]
――お疲れ様。
貴方は優しすぎたようね。
[最後に告げた言葉は直円には届いたか。]
ホリィィィィ様ァァァァァァ……
おぉぉ慕いぃぃぃぃ申してぇぇおりまぁしたぁぁ……。
人形のようにぃぃぃ可憐でぇ……
人形のようにぃぃぃ 「つまらない」
お人ぉぉ でし……たぁ……
[それは誰も気にとめない路傍を這う御器被の羽音。
弱々しい虫けらの それでいて「煩わしい」羽音に過ぎない**]
[笑い声が聴こえてくる。
引き裂かれる心の悲鳴を眼を閉じて聴く。
狂う事すら出来ない痛みを抱えたそれは、妙なる調べ]
何もしてない?
出会っただろう?
私と。
[何の罰だと、罪だと求めるなら。
退屈しのぎの遊びを求める鬼の前に、姿を見せたそれだけだと]
―回想・直円について―
……相容れ、ない。
[時の幕府、権力者にとって不都合だったからと理解する。
神のもとに平等――それはまるで。
この場で言う事は憚られた。]
そう。……これも、きぼうなんだ。
[形は変わっても。]
ありがとう。
[「優しい」眼差しに、笑みを返す。
血に塗れ、擦り切れていく道の上で、
――「思い」は隠れても忍んでも、強い**]
雑草になりきれなかったようだな。
[貪欲に根を伸ばし、蔓延り、地位を逆転させる程
徹して狂えたならまだ良かっただろう]
私を愉しませると言う点では及第点か。
[狂い切っていれば、生き延びたかどうかは知らないが]
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―戦場・司令部近く―
[外に出た明之進がどんな目にあったか覚えている。城の中で、吸血鬼達が何と言っているのか知っている。 わざと家畜に皮膚を浅く裂かせ、流血に気を失う零瑠にこれも教育だと嘲笑って居たことも。
お気に入りの『雛鳥』達は、 孤立していた。孤立させられていた。]
(437) 2014/02/11(Tue) 22時頃
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前座にしては愉しめた方か。
[強者には強者の、弱者には弱者の愉しみがある。
それを彼は果たしただけ。
諦め従いながら、結局雑草に成り切れなかった鬼に
何かを思う事はそれ以上は無かった]
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[もしも――…周が『自由』をくれるなら。 連れて行ってくれるのだろうか。
かつての孤児院のような、夢に表れる屋敷のような。そんな新しい場所に。]
(438) 2014/02/11(Tue) 22時頃
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『死体を捨てろ。』
[吸血鬼の助言に片眉が上がる。]
『遺体を返せ!』
[守護部隊員の脅言に眉が寄る。 何れも学帽の内側で。]
此はまだ生きている。 南方周は、『仲間』ではないのか?
―――君たちの、『家族』ではないの、か?
(439) 2014/02/11(Tue) 22時半頃
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[問うのは白の集団へ。対吸血鬼用の武器を零瑠と周に向け、振るってくる。
それがどういう代物か。 知る故に、右の手で纏めて握った。 こんなもの、折れてしまえば良い。] ! こ、のっ!
[躱しきれない斬撃。ぽたり、血の落ちる音を聞いた。]
(441) 2014/02/11(Tue) 22時半頃
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[白の手袋は周の血で赤に染まる。 呼び掛けた明之進からの応答はまだ、ない。 耳元、今度は音と為った言葉に>>267>>332、零瑠は1度笑みを消し。 声をかけようとした口が開き、そして閉じる。>>347 後方に居るのは誰か、確かめずとも双方の声で知る。>>355 訛りの強い、独特の。]
(442) 2014/02/11(Tue) 22時半頃
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[もしも周が生き延びていたら……。 守護隊の一員になったのは想定内。
零瑠の一言がどれ程彼に響いたのかは知れないが、孤児院を訪れる事の多かった安吾とジャニスであれば、力の振るい方を示すだろうと思っていた。
けれど、サミュエルも、とは。 ひゅうと鳴る息を隠すように飲み込み、ゆるく首を振る。]
此処では、無理。 俺がこうして押さえてないと、 ……血が。
[もっと流れてしまう。>>364 死んでしまう、かも知れない。]
(446) 2014/02/11(Tue) 22時半頃
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[お前『も』と言う彼が出会った鬼は理依。其処までを聞き、ゆっくりと振り返るとサミュエルに顔を見せた。]
………聞いた、よ。 サミュエルも生きてるって…
ほんと、だ。
[眩しげに目を細め、微笑む。 成長してしまった彼の、白ではなく黒を纏う姿を確かめ、5年の隔たりを、想う。]
(448) 2014/02/11(Tue) 23時頃
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………サミュエル。サミュエル、さみゅえる
[懐かしげに何度も名を呼び]
それで、
(449) 2014/02/11(Tue) 23時頃
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殺すと言われて、殺したの? 理依を。
[取り敢えずも何も。>>440]
それとも、そうやって……退けって――言った?
理依は、サミュエルのこと、気にしていたのに。
[直接は聞いて居ない。ただ、城で交わした彼とのやり取りで、周とサミュエルにもきっと謝りたいのだと思っただけのこと。
此方にと向かう剛糸で繋がれた双鬼の姿を認め。 零瑠は微笑み浮かべたまま、サミュエルに手を差し伸べた。*]
(451) 2014/02/11(Tue) 23時頃
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