204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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…………協力してくれたら、いいね……
[うまくいけばいいというように、願い。
フィリップが触れてくる手。
それに瞳を細めて、くすぐったそうに笑う。
近い距離に気づくことなく]
[ざわついた心も、
握られた手の感覚に少し落ち着く]
……うん。
そう、だね……
[同じようにうなずきを返した]
大人同士 また説得力 違うよね
[頷きを返しながら 笑顔を見た
その笑顔 見惚れて笑う
自分の手が ラルフに触れて その笑顔が嬉しくて
湧き上がるものがある けれど
静かな中 それに 従ってはいけない と
だから 近い距離 もっとという
自分の欲求は これ以上叶えない]
[今 ラルフの手 握っているのは 自分
ラルフの心が落ち着くのを感じ
彼の中の ささくれも 落ち着いて
握った手指 指先を絡め…………指先が
ラルフの指 そこに傷があることを伝える]
避けられること 避けなきゃ
[その傷 そっと指先で撫でる]
うん。
それなら大丈夫かもしれないし。
[フィリップの笑みに、同じように笑みを浮かべる。
触れられたところも暖かくて。
けれど、それ以上近寄ることはしないまま]
[傷にふれる指先に、小さく手が震える。
痛みは、心なのか、傷なのか、よくわからなくて。
それでも、伝わるものに、気持ちは落ち着いていく]
……衝動を覚える前に、離れたい……
[痛い。
ざわつく心が痛い。
その腕に抱かれているのが、うらやましいと感じて。
見ないことで、誤魔化そうとして。
増えた、血の匂いに、くらりとめまいがしそうになる]
――フィリップ。
[すがるように名を呼んだ。
彼はトレイル相手に衝動を覚えていたから。
いま、彼が衝動にまけたら――
そう思うと、怖くも、あった]
――フィリップ、
いま、――衝動に負けたら
君が、……殺されてしまう……
[それはいやだと思う。
衝動を抑えきれないところを見るのも、いやだと思う]
――……
[温泉に残してきた二人を思う。
じくり、痛むものを感じて。
瞳を伏せた。
衝動は、まだ――]
……そう、だ。
フィリップと、いっしょに、旅するなら。
ドナルドにも言わないと……
ドナルドも賛成してくれたら、フランシスも、説得できるかも。
[仲のよい二人を思う。
フランシスはどちらにも保護者として接していると思っているけれど。
ドナルドはフランシスのことをよく理解していると思うから。
そんなことを考えて。
ノックスたちから、意識をそらす]
ーーーーー…………っ
ラ…………ルフっ?
ぁ…………っ
[引き戻した 思い 痛い 何かが痛くて
先ほど触れた傷が あれは誰の?
痛みを感じるなら彼の? 彼とは?
痛むことが悲しくて そして 痛みは
理性を生む]
…………ラルフ……っ
[縋るラルフを抱きしめるように
ラルフに縋りつくかのように
心はラルフを求めて]
…………う……ん
お……れは……ラルフと 生きたい
[ふらと 崩れ落ちそうな脚
それでも 温泉から逃げた 衝動から逃げた
目の前は暗い だから ラルフの思いを導にして]
食べたい 食べたくない
食べたくない 食べたい
駄目だ ここを 一緒に
駄目だ 離れて ここから
フィリップ……
[伝わる。
その、衝動に。
手を伸ばして、治めることができるかと]
[痛い 痛む きしりと
暖かな 陽射し 思わせる
あそこに帰りたい そう 一緒に旅を]
[だから 一番
衝動を 向けてはいけない人]
ラル…………ふ……
[その温度は ラルフのもの
一番衝動を 向けては いけない 存在]
――
フィリップ、……
[食いつかれても、怖さはない。
ただ、フィリップが落ち着くように、呼びかけ続ける]
俺ーーーーなんてこと を
[薄い硝子が砕けるような そんな音が響く
衝動を抑えた 望みが絶たれる 音]
[痛い、熱い。
食われる感覚に、ぞくり、とする。
それもまた、一種の衝動をあおって。
気づいたフィリップに笑みを向けた]
……いいよ。
俺が、傍にいたせい、だから。
違う ラルフのせいじゃない 違う
………………
[ほと ほとと
滴が目からこぼれる]
一緒にいられなくなる
[どうして こんな獣と 大事なラルフを
一緒に旅をさせてくれようか?]
ーーー一緒にいられない
[どうして 今後 ラルフに一切衝動を向けないなんて
己を信じられようか?]
……一緒にいられないのは、悲しい、よ。
[涙止まらぬ様子に、悲しげな色がかえる]
――フィリップ。
|
― 3階・室内 ―
[幼い頃から評価はいつも同じだった。 落ち着いている、大人びている、聞き分けの良い大人しい子供。 そう思われていたから、ディーンは全てを飲み込んだ。 吐き出すべき毒も、我儘も全てを飲み込んで汚れていった。
本当は我儘で醜くて、弱い。 そんな自分の姿を、ディーンはひたすらに隠し続けた。
しかし、>>349柔らかな日の光がそれを暴いた。 炎で以て頑なだった氷を溶かし、それだけでなく――。]
ニコラ――……、っ
[白いベッドに横たわったまま、ディーンは彼の名を呼んだ。 優しいキスと、汚れた指先を噛む硬い歯の感触だけでひどく熱を帯びた息を吐く。]
(357) 2014/11/18(Tue) 22時頃
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けどーーーーけど
一緒にいたら いつか 食べてしまう
いつか 終わってしまう
いやだ 俺 ラルフ 食べたくない……っ
でも 食べたいって 思ってる
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……もっと、強く 噛んで
[溜め込んだ汚れはきっと、彼に食べられる為にあった。 汚れて穢れてぶくぶくに太った欲望で、 彼の腹と心を満たすことが出来る。 そう思えば、あさましく強請ることの一つぐらい何でもない。
空いたままの片方の手を伸ばし、ニコラの髪をそっと撫でる。 爪先も、舌も、眼球も、腸も。 全てを彼に、食まれたい。]
(358) 2014/11/18(Tue) 22時頃
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――――フィリップ。
[食べられたら、フィリップの一部になる。
けれど、声は聞こえないし。
温かさも、感じられるか、どうかわからなくて]
……たべなくても、いっしょにいたいのに、ね。
…………一緒にいたい ラルフと
痛いよ いたいけど…………
一緒に…………そばに
――うん。
いっしょに……それだけでいいのに。
[衝動の、抑えることのできない強さ。
それは、どうしようもないもので。
フィリップを、ただ案じている。
それと同時に――
同じものを感じてしまったら。
きっと、抑えることなどできないと、思う]
……それだけが できない
[獣であることも悪くないと思った
それが すぐに転じられる
一緒にいられない ラルフを傷つけた
それでも 大丈夫と 言ってくれる
ラルフといられない
きっと いつか抑えが効かなくなる
同調した感覚 何に?]
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