194 花籠遊里
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[でもその想いを口にしたが最後、 櫻に僕が甘い毒を吸わせるのではなく、 僕が櫻に誘われ甘い夢を微睡むことになるだろう。
侮っていた。 そんな言葉が頭に浮かんだ。 僕が花に捕われることなどないと思っていた。
そもそも僕がベルの姓を自分に合っていると 胸を張れるようになったのは誰のおかげだったか、 忘れたわけではないというのに。]
そうかあ、じゃあ僕も何度でも君に会いに行くね。 そしたら寂しくないものね。
[僕は柔和な微笑みの仮面を被って、 甘い毒を吸わせる金色の毒蛾に擬態した。 その毒が裡に廻り始めてるのは僕の方だけれど。]
(223) 2014/09/16(Tue) 20時頃
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僕のために、啼いてくれるって? 嬉しいなあ。
[この指は蜜のように甘ったるい毒を齎す毒針となるだろうか?否、僕はもう櫻の花を大切に扱いたいだけであった。 もしかすればその真実味が、相手に取っては毒をより毒足らしめるスパイスとなるのかもしれなかったが、それは僕の知る所ではない。
こくりと櫻子が自分を受け入れる意思を示す頷きをすると、首の動きと共にさらりと揺れる髪に合わせて自身の心も揺れるようだった。
指を引き抜くと、失った感触を求めてひくつくそこに僕の熱が導かれた。]
一つになろうね…
[その囁きの柔らかさに違わぬ優しさで、僕は彼の中に熱を沈み込ませた。]
(224) 2014/09/16(Tue) 20時頃
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‘Tis better to have loved and lost
than never to have loved at all.
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…うん、忘れないでね。
[まいったなあ、そんなに強く抱きしめられたら仮面が剥がれてしまいそうになるのだけれど。
それでも僕は空いている片手でその抱擁に応えた。 愛が忘れさせるのやら、 はたまた時が忘れさせるのやら。 僕は櫻子との関係の結末を見たくなったから。>>225
好きだよ櫻子。
先ほどは軽々しく口に乗せた台詞を胸の裡で呟いては、それがさっきとは違う特別な響きを持っているように感じられたのは錯覚か……
櫻の花はいつも暖かい。いつも『しあわせ』そう。 仮令実際はそうでなかったとしても、 散ることを知らない桜の美しさに溺れそうになる。
寂寥を感じる度にこの館を訪れては、 櫻の幹にしな垂れかかる。そんな関係になろうか?]
(236) 2014/09/16(Tue) 22時半頃
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[でもそんな関係は…一層寂しさを増長させそう。]
――ん、はぁっ
[肉を押し割り自身が櫻の花弁の熱さに包まれると、息が漏れ出た。 櫻子の口からも嬌声が溢れたなら、二人で呼吸を共にする喜びを分かち合おうと、雄を奥へと押し進める。]
櫻子――
[無意識が自分の腕の下にある者の名を紡がせる。
やがてとっぷりと自身は櫻子の中へ全て収められ、僕は息を吐く。受け入れる肉塊は微かに収縮して悦びを表す。 櫻子の表情を見ると涙は流れていなかったが、代わりにその頬を伝う汗を僕は舐め取った。]
…動く、からね。
[律動を開始するためにゆるゆると入り口の近くまで引き抜きながら、微笑み囁く。]
(239) 2014/09/16(Tue) 22時半頃
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[この感情をどう表せばいいのか。
腹の辺りに渦巻くこれを。
怒りか、呆れか、それとも悲しみか、羞恥か。
『花』として誇りを持ち、美しく咲き誇れ。
俺を育てた花は口癖のように言っていた。
どんな辱めを受けようとも、どのような思いをしても蝶を惑わせる花であれ。
その言葉を道標に、今まで歩んできたはずなのに。]
――……
[ごめんなさい、朧
と。蝶の言葉により友の貌を伝える際に小さく告げる
命によりその怜悧な顔を穢し、なおも言葉で責めねばならぬ事への謝罪と、それでも目を逸らせぬことへの懺悔であった]
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約束なんて大仰な、
[笑おうとして、その約束が途方も無く嬉しい自分がいた。 きっと、櫻子は嘘偽りの言葉は軽々しく口にはしない。 櫻子という一本の花を演じ続ける一人の人間…僕はその真名を知らないが、その演技は真実となって一夜限りの夢を具現させるのだろう。
だから、彼の言う約束はきっと本当の約束。
僕は息を吐き、吸うと。 締め付け求める内部の奥に向かって思いっきり楔を打ち込み、縋りつき名を呼ぶ櫻に叫ぶようにして囁いた。]
櫻子、好きだ……!
[蕩けるまぐわいの中でなら、熱に酔っての言葉だと自分を誤魔化せる気がしたから。]
好きだ、好き…櫻子だけだ…ッ!
[狂熱の酩酊をむしろ蜜毒へと変えようかと言葉を繰り返す。 愛の囁き、打ち付ける肉の音が響くたびに櫻の花弁は僕を締め付けたか。]
(256) 2014/09/17(Wed) 00時頃
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[櫻子を強く抱き締め、ほとんど密着した二人の身体。 漏れる嬌声は直に耳に届いて僕の欲を脈打たせる。 汗の浮いた小さな身体は僕の腕の中で踊って、身体を反らせて、目一杯に悦楽を表現する。
問うまでもなく、好いのだ。 苦痛ではなく。
僕はそのことに安心すると、強かに櫻の芽を抉った。]
…っ!
[柔和な微笑みを崩し食い縛る歯は、 こちらも悦びを感じている証拠であった。
寂しくなんかはない。 一緒に熱に熔けてくれる君がいる今宵は。]
(257) 2014/09/17(Wed) 00時頃
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[一際高く高く。甘く甘く。 小鳥が囀る。>>262
もう他の牢の声も音も届かなくて。
櫻の香りが鼻を突き、 重ね合わせた身体の狭間に白を放つ。
囀りと共に櫻は僕自身を強く締め付け、 高まる圧に堪え切れなく、 純白を白濁に染め上げる蜜を僕はどくりと穿った。
櫻の花と一つになり染まる感覚に 僕はある種の充足を感じていた。 何に満たされて『しあわせ』を感じているのか、 自分自身でも分からなかったけれど。
ただ、君もそう感じていて欲しいとばかり。]
(270) 2014/09/17(Wed) 01時半頃
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………櫻子。
[荒い息。滴る汗。快楽の残滓。
そういう物に僕は、 仮面ではなく柔らかく微笑んだ。
一緒に果ててくれた君の頬をそっと撫でる。 腕の中の君は大きく呼吸をしていて。 僕の髪を搔き抱いていたその小さい指に 金糸が絡まっているのを見た。
目に入るもの、感じるものの一つ一つが 僕と君とのつながりを実感させた。]
(271) 2014/09/17(Wed) 01時半頃
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[こんな、ゆめものがたりが誠であれば
所謂『しあわせ』というものなのでしょう。
ですが、なりません。
『特別』になることも
『特別』をもつことも
『花』には許されざるべきことなのです。]
[僕たちに許されているのは、ただひとつ。
『花』として咲く。
ただ、それだけなのでございます。]
[――朧、朧
声ならぬ声で彼を呼ぶ
そんな顔をしないでと虚空を見つめる彼の頬から白を拭う
友にだけは、こんなに泣き濡れた姿を見せたくなかった
失望されたくないんだ、と]
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───ああ、『しあわせ』だ。
[言葉を繰り返しながら、僕は内心で賞賛する。
優しい櫻、美しい櫻。
君と過ごす一夜は本当に倖せだった。 君の強さに触れて僕は……きっといい作品が書ける。**]
(282) 2014/09/17(Wed) 02時頃
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愛しい愛しい吾が子達。
お勤め、ご苦労様。
夢を売り売り、躯を売って。
せっせと借金返しておくれ。
いやいや、返せなくとも構わないんだよ。
花咲く内は、私が愛でていてあげるからね?
[どうせいつかは枯れる花なれば。
月下の元 夢に揺蕩うことは許されよう。
押し潰した筈の芽は 結局は小さく蕾を芽吹かせた。
けれども孰れ摘み取られてしまうのだから。
蜜濃くなるその一瞬だけでも。
『花』として、『蝶』を望む]
[花しかしらぬ男の一面。
笑い、嗤っては、今宵の対価をばら撒いていく。
地下牢に舞うのは紙幣の花吹雪。
花弁の枚数が、今夜支払われた対価。
さあ拾えと、男は花々を見下した。
歪んだ唇に滲むのは、狂気の沙汰であっただろう。]
[鏡であれば何があっても耐えられると思っていた
鏡の様に全て相手を映し委ねれば、この狂乱にも順応できると
剥がさないで、中を見ないで
そして失望しないでと、藤の花は静かに夜露を零すのでした]
許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/09/17(Wed) 02時頃
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