204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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[言葉を綴ろうとして、ぐ、と拳を握る。
けれど、告げずにはいられなかった。]
『フィリップは、トレイルにナイフを向けて。
刃で傷付けた。血を流させた。
そうして、引き摺って―――楽しいと言って…。』
………っ
[肩で息をし、ぐと唇を噛み……ゆると力を弛めた。
唇は紡ぐ。]
『……憎むのも、疲れた。』
[本当ならば殴ってでも止めれば良かった。
それを選ばなかったのは、もっと大事な優先する相手がいたから。
そして、ただの見物人と化していた男らは、保護者が、あるいは自らの庇護すべき存在が他者に心奪われる恐怖を、あの瞬間から抱え続けている。]
慰めねえ、とは言ったが苛めるつもりもないんだっての。
[結局誰も彼もが、己やそこに属する相手が大事なのだ。
ノックスにはノックスの論理があるように、他者にはそれぞれ異なる論理がある。
男の大切な存在は未だ奪われていない以上、必要以上に責められるものでもない。]
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[テーブルの上で、ノックスは文字を綴った。 血ではなく、水で濡らした指先で。
ゆっくりとした指の動き。 思い出して、怒りに任せた動き。
後で拭かないといけないな、と……ぼんやり思う。]
(206) 2014/11/25(Tue) 23時半頃
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ーーーわかるようになるのかな
色々 想像つかないよ…………
ドナルド 変な人
[まっすぐな言葉に どうしていいかわからず]
『……バーニィがもっと気遣ってくれれば、良いんだ。
知らないから、苛められてるように聞こえるんだ。
シメオンからしたら、確かにニコラは――保護者を奪った相手、なんだよ、な。』
[視点を変えれば、当然のように変わっていくもの。]
わかるようになるさ。
今は想像つかなくてもわかる日がくる。
――…って、
変ってなんだよ。
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[じぃぃと茶褐色を見上げ。>>205]
『プリシラと、何かあった?』
[問いは短い。答えるまで離さない構え。]
(209) 2014/11/26(Wed) 00時頃
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ーーーーうん
だって……俺なんかを構うから
変な人ーーーー
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[予想外の言葉にぱちと瞬いた。>>212 衝動? 誰に?
自分ではないという絶対の自身があるから、あの時、居間に居た全員を思い返し。部屋の隅で蹲っていた彼が衝動を覚える相手だなんて。
一人しか、居ない。]
……。
[視界の端に、赤毛が見えても、バーナバスを離さなかった。>>211]
『……むしろ、傍に居ない方が彼の為じゃない?』
(216) 2014/11/26(Wed) 00時頃
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『大事だからこそ。
―――遠くで。
僕は、プリシラをニコラと同じようにしたくない。 ラルフのように、止めたくない。]
(218) 2014/11/26(Wed) 00時頃
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[不思議と。 こうしてバーナバスと接していると、‘良い保護者’で居られた。
気付いてる? 悲劇は、すぐ傍にあるのに。]
『……僕はまた、この手を離してしまうの、かな。』
[ニコラの時のように。]
(220) 2014/11/26(Wed) 00時頃
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[手を伸ばしても掴めなかった、トレイルの時のように。
強く、強く服を握ってから、力を弛めた。 何時でも抜けていける程度の力加減。]
『……まだプリシラは生きてるし、バーニィなら……きっと彼の衝動を何とかしてやれる、ね。』
[ノックスとは違って。バーナバスなら。]
(225) 2014/11/26(Wed) 00時半頃
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『……離した、よ』
[ほぅら。と、手をひらり。>>226 「あ」の形に口を開け、何故か逃げ去る赤毛。]
……
『嫌われたかなぁ。とうとうプリシラにまで。』
[膝を抱えて、うずくまってしまいたい。]
(230) 2014/11/26(Wed) 00時半頃
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…………
『また、明日。』
[昔は、トレイルもあんな風にちらっと見ては駆け出していったなぁと思い出しながら、バーナバスの居た空間に言葉を送った。>>231]
(234) 2014/11/26(Wed) 00時半頃
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―リラ/居間―
[恋しさが募った。 だから、トレイルの唇にそっとキスをして、足許に屈む。足の指を口に含め、爪と肉の間に舌先を入る。擽ったくなる場所だけれど、反応は当然のようにない。
爪を噛んで上に向けて爪を剥がす。どろりと血が溢れ。10本の指を同様に、骨までしゃぶりついた。]
……
[ニコラはといえば。眼窟に匙を入れて脳を掬いだし、スープのように啜る。彼の頭のなかを見てみたいと、言動に翻弄されることがあったが、今はどうだ。結局分からない。分かるのは美味いという感覚だけ。
バーナバスのおまじないもある。 なにも考えず、早く寝てしまおうと。愛し子たちの間で目を瞑った。**]
(240) 2014/11/26(Wed) 01時頃
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―ヴァニラ/過去―
[昔の昔。 ノックスの世界には2つの灯りがあった。温かく足元を照らす光。 職人の師匠と、幼馴染みのバーナバス。
生きる術と生きる心を得た。
幼馴染みが旅に出たとき。 記念の匙を贈った。
一時の別れと言い聞かせた。]
バーニィにはバーニィの、人生があるもの。
バーニィは、……僕が居なくても平気だもの。少しぐらい寂しくても、平気。
[ぽつり。 道を照らす明かりはひとつになった。]
(264) 2014/11/26(Wed) 02時半頃
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『愛してるよ、ノックス……。』
[粘り気のある声、耳許の囁き。 愛しい人が、自分の腕の中に在る幸福。自分の裡に在る悦楽。自分の指先ひとつで、喜んでくれる充実。
少しずつ喰らいあい、少しずつ狂っていく。
他の男に犯されている間、あの人は上擦る声でノックスの名を呼び、自らを慰めていたから赦してあげた。
他の人間を喰らう様を見た時、衝動に駆られて抑えきれないのだなと憐れみ赦してあげた。
ノックスには、愛を捧げるその人しか居なかったから。
ぽつん。 道を照らす明かりはひとつだけ。]
(265) 2014/11/26(Wed) 02時半頃
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やめてっ! 殺さないで!!
『あれは、本能を制御しきれなくなった魔獣だ。せめて、‘保護者’だった自分が引導を渡すのが務めだ。』
銃声による耳鳴りと火薬の臭いが一晩経っても拭えなかった。 ――あの人は殺された。>>3:417
その意味を知ったのは、大人になってから。‘良い保護者’は仔狼をよく躾、よく諭し、時には自らの手で厳罰を与えなければならないと知った。
――。 道を照らす明かりは、消えてしまった。]
(266) 2014/11/26(Wed) 02時半頃
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[その人は、蛍のような人だった。 閑古鳥の鳴く露天業。始めてノックスの作品を好きだと言ってくれた。]
『私ね。ノックスさんの本棚がとても気に入ったの。 他にはどんな家具を造るのかしら?
ねぇ。いつか、私の為に……私だけの為に、何か造ってくれません、か?』
[互いに気遣い、高めあう。そんな愛し方は初めてだった。体を重ねて得た熱と、快楽と、美酒に酔い――…衝動に負けて、獣に成り果てた。
その人は、蛍のような人だった。 仄かに静かに夜に光り、鳴かぬまま身を焦がして――…消えた。**]
(267) 2014/11/26(Wed) 02時半頃
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