158 雪の夜に
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なんで……あぁ、何か理由をつけて脅されてる? そいつは期待しない方が良いぜ。 人間には人狼の子供との約束を守る義理なんかないからな。
[拒むように、子供が手足を退けた。 それを目にして、一旦は手を止める。]
何て言われたんだ?
(54) snow03 2013/12/31(Tue) 03時頃
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[狭い牢の中、ヤニクがハナを逃がそうとしているらしいことは何と無く把握する事はできたが、ソフィアは動く事はできなかった。 血の匂いには気付かなかったが、飼い慣らそうとした、その言葉にソフィアは顔をあげる。]
……
[また、項垂れた。 恐らく、ヤニクがもう一人の人狼なのだと、ソフィアは思った。 ハナの言葉からして、ホレーショーを襲ったのはヤニクなのだろう。 声にならない声で、また懺悔の言葉を吐く。 ]
(55) みう 2013/12/31(Tue) 03時頃
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……ここでじっとしてたら、おかみさんを出してくれるって。 それに……
[男の言葉に表情を引きつらせ、それでも少女は言葉を口にします。 一幕の逡巡。]
出ないほうがいい。 出ないほうがいいよ。 だめだよ。
[暗い顔をして、少女はゆるく首を振ります。]
(56) asta_jan 2013/12/31(Tue) 03時頃
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[自分があんな事を言わなければ良かったのだろうか。
事実がどうであれ、もうそこには、ここに連れて来られた時まで覚えていた様な感情は無く、あるのはただ自責の念だけ。**]
(57) みう 2013/12/31(Tue) 03時頃
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……女将さんが真実人狼じゃないとしたら、 嬢ちゃんがここにいようが、いまいが、 女将さんを外に出さない理由がねぇだろうな。
ここから嬢ちゃんがいなくなったとするだろ。 そしたら表の奴らは、女将さんを捕まえてても良い事ないぜ。 無実の人間を閉じ込めてる悪者って事になっちまうからな。
[事態はもう少し複雑なのだろうが。]
……なんで、外に出ない方が良い?
(58) snow03 2013/12/31(Tue) 03時半頃
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[女将さんが真実邪魔なら。それに人狼疑惑以外で投獄された理由があるとするなら、女将さんも人狼だった、ということで処理する道もあるのでしょう。 けれど、それはふたりにはわからぬ話です。 少女も無自覚に、理由を欲していたのかもしれません。
少女は暗闇の中、目を見開いて木枷に覆われた自らのちいさな手のひらに視線をやっていました。 震えるその手は、カチャカチャと耳障りな音を立てています。]
だって。だって。 きっとまた、だれかをけがさせちゃう。 お、おとーさんとおかーさんみたいに あ あ あ
[少女の身の震えが大きくなりました。 既に彼女の中では、ヒューや、母のみならず、ホレーショーや父親を含めた数多の人を傷つけたことが事実となっていました。 そして、それがこれからも行われるだろうことも。]
(59) asta_jan 2013/12/31(Tue) 03時半頃
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[人狼としての牙爪が振るわれる事を恐れていた。 子供自身のそれが、子供から親を奪っているのだし、 大人の集団から敵意を向けられ、攻撃される体験も付随した。]
[手枷に縛されたままの小さな手を握る。]
……方法があるっつったらどうする?
[彼女の不幸は、――人間として育ってしまった事だ。]
お前がこの手で大事なものを傷付けないで済むように、 なる方法があるっつったらどうする。
(60) snow03 2013/12/31(Tue) 04時頃
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良いか。人間だろうが人狼だろうが簡単にウソをつく。 今の俺が、お前を連れ出すために都合の良い方便を 言ってるかも知れないって、解らないだろ。
俺だって、お前が本当にここにいたいのか、違うのか、 まだ生きてたいのか、もう死にたいのか、 なんて解りっこないしな。
ただ、ハナが同族だから、
友達だっつったから、――やりたいようにやってるだけだ。
[氷色の、おさない両眼に視線を合わせた。]
人間でいるか、人狼になるか、
[そして手枷の鍵穴にひとつひとつ鍵を合わせていく。]
生きるか、死ぬか。……お前が選べ。
(61) snow03 2013/12/31(Tue) 04時頃
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ほんとうに?
[恐る恐る、少女の視線が手枷からあげられました。青鉄の、強い意志をもった眼がハナを捉えます。]
友だちなら、信じるよ。 うそなんて、いわない。
[瞳に光を灯して、少女も男を見返しました。]
でも――
人間なら、しぬしかないの? もう、ここには、いられないんだよね……
[既に、それはわかっているのでしょう。 町の人の笑顔が、温もりが、そして、憎しみが。 ちいさな身体の中を通り抜けていって、少女は痛そうに眉をひそめました。]
(62) asta_jan 2013/12/31(Tue) 04時頃
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お前が人狼だって、町のほとんどの人間が考えてる。 もしかしたら殺されはしないかも知れないけど、 ここにいても、元には戻れない。 少なくとも、人間の子供だとは見てくれない筈だ。
お前を庇ってた他の人間も、もうお前を庇えないと思う。
[邪魔な枷をひとつひとつ取っ払って、頭を撫でた。]
町の外に出た事ないんだっけ。 俺が群れの移動に合流した時はもう少し小さかったかな…… しばらく、しんどいとは思うけど、何とかしてやる。
おいで、ハナ。
(63) snow03 2013/12/31(Tue) 04時半頃
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[差し出された浅黒い手のひらを、ハナはじっと見守っていました。 母の、女将さんの、神さまの教えがちいさなからだを通り抜けます。]
[すがるように。 祈るように。 畏れるように。
少女は、男の手をとったのです。]
(64) asta_jan 2013/12/31(Tue) 04時半頃
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[人が奉ずる神を知らず、祈る先を持たず、 人の狭間で牙を剥くことが己の生きるすべて]
[手を取った小さな体に、誰かが与えた毛布を被せた。 牢の中も相当だが、外も冷えるのだ。 そのまま抱え上げる。]
[踵を返せば、再びソフィアの前を通る。 酷く項垂れている様に、己の正体を思った。]
……自分があんな事を言ったからだ、って、 もしかして思ってる? だとしたら、そいつは考え過ぎだ。 ――その理由は二の次だったからな。
[鍵束を放った。がしゃりと床に落ちる。 囚われた娘が手を伸ばせば届くかも知れない、 あるいはどうあっても届かないかも知れない、距離。
己と彼女の、待つ者と手を伸ばした者の、距離]
(65) snow03 2013/12/31(Tue) 05時頃
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……あのさあ、アンジェ、
ちょっと手伝って欲しい事があるんだが、
つったら、怒る?
[妙な前振りになったのは、
ちょっと無茶振りな自覚があった所為だ。*]
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― 診療所 ―
[病室の外が騒がしい。 緊迫した空気が、壁や扉越しにも伝わってきた。 叫び声や呼び声。人が出入りする足音や、扉の開閉音。 病室に残った医師の纏った雰囲気や顔つきが僅かに変わる。 彼は落ち着いたままだったが、静かに仕事に備えているかのようにヒューには見えた。
『今、女を捕まえたばかりだろう!』 『やはり子供の他にまだいたんだ!』
『宿だ!宿で襲われている!』
総毛立つ。 括られたままの手を見下ろした。
『船乗りだ!船乗りの女が喰われている!』
ぎし、と寝台が軋んで音を立てた。]
(66) gekonra 2013/12/31(Tue) 13時頃
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[船乗りの女が彼女一人でなくとも、一番嫌な展開が一番最初に頭を過ぎっていた。 直後、手を括っている紐の結び目を一瞥し、顔を近づけた。 引っ張るべき箇所は既に観察済みだ。 歯で探し、顎に力をこめて、顔を引く。 邪魔だと苛立ちながらも、それを外すのに長い時間は必要なかった。外してくれと医者を相手に駄々をこねるより、絶対に早いと思える程度には。
今までも、片手の指でどうにもならない時は、口や歯を使う事が多かった。今後はこれを頼りにするしかないのだろうことは、凡そ見当がついていた。
結び目が緩み、解けた。 殆ど同時にヒューは寝台から転げ落ちた。]
(67) gekonra 2013/12/31(Tue) 13時頃
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……げほっ
[手を庇って背中を打ちつけ、咽ながら、肘を支えに身を起こす。 眩暈で目の前が真っ暗になるが、気にせず立ち上がった。 大きな音に振り返った医者が驚き呆れていた。 すぐにだめだと渋られたが、それを無視して進んでいく。 病室の扉に肩を寄せて押し開けた。 病室の外には、怪我人の情報が寄せられていた。 誰かの「助からない」という声が耳に飛び込んできた。 焦燥感に歯がみした。 嫌な予感に足が震える。 部屋に戻れと言われても、頑として聞き入れなかった。 無事であるように祈る。その祈りには、セレストでない事を祈るという、身勝手も含まれた。**]
(68) gekonra 2013/12/31(Tue) 13時頃
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[呼びかける囁きの中も、 女は眠る老人の傍らにあった。 2通の封書は胸に収めて、 何も出来ないというのに離れがたいのは感傷だ。
やがて訪れた彼が――、 赤を纏う青年が苦い笑みを零していくのに、 それでも包んでいた手を離せぬまま]
……、
[この状況では、医者が来るにも時間がかかるだろう。 この人は再び目を覚ましてくれるのか、そんなことに怯えていた]
(69) sen-jyu 2014/01/01(Wed) 01時半頃
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怒ったりはしないけれど。
……私に出来ることが、あるかしら?
[届いた囁きには、首をかしげる。
少なくとも荒事では役に立てはしまい]
ヤニクは、戻り際、喪服の女に自分の書いた封書を見せて、
snow03 2014/01/01(Wed) 03時頃
この住所に嬢ちゃんを届けて欲しい。 ……出来るか?
[言うのは一言だが、各所の目をごまかしたり、
実現するには色々と手間がかかる筈だ。]
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[囁きに答えを返すのに間の開いた。
青年の願いを受け入れるのなら、 この町を再び離れねばらならないだろう。
離れがたい想いは、重ねた手の温もりと共に。 人狼の青年がこの航行にいなければ、 この町に戻る事もなかったというのに。
けれどその情がこの町へ災いを呼び込んだ。 人狼が身を守る為に、人を襲うを見ぬふりをして庇いだてた。 人々が無実の罪で投獄されたのも、牙に身を裂かれたのも、 ――いまや老いた彼をこんな目に遭わせているのも、 己が何もしなかったからだ]
(70) sen-jyu 2014/01/01(Wed) 19時半頃
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[正しいことだと思ってはいなかった。 正しさに裁かれるのだとしたら、けれど何故。
あの子は人を喰わねば生きられない生き物として、 産まれついたのだろう。
答えのないだろう問いの狭間で身動きがとれなくなる]
(71) sen-jyu 2014/01/01(Wed) 19時半頃
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[眠る老人の傍ら、 女は己宛ての封書の一通を開く。 >>5+18 懐かしい筆跡と、懐かしい絵姿。 震える指がその文字をなぞる。
“幸せに”
それは決して辿り着けぬ岸辺だ。
己はまた同じことを繰り返すだろう。 人の正義にも獣の正義にも、染まることの出来ぬまま、 寄るべなく魂を彷徨わせ、きっと死ぬときは一人きり。
それは受け入れるべき罰のようなものだと思っていた]
(72) sen-jyu 2014/01/01(Wed) 19時半頃
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[その鉛筆描きの絵姿に視線を落とす、 少女の頃のアンジェリカがそこにいた。 穢れを苦悩を知らぬままにあどけなく微笑んでいる、 もう、こんな笑顔は忘れてしまった]
ねえ、 こんな私でも、
――…あなたの元に帰っても、いい?
[変わり果てた全てが、それを許さないとしても]
いつか、終わりの時が来たら、 この頃に還ることが出来ると、……信じても、いい?
[戻らぬ時が刻まれた彼の乾いた手に、 その頬になぞるように触れて、そっと口唇を落とす。
そして、青年の囁きに音なく答えた]
(73) sen-jyu 2014/01/01(Wed) 19時半頃
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わかったわ、――船出の日に。
[あの子供であれば。
積荷の一つでも海に捨てれば、
船に乗り込ませることくらいは可能だろう。
この町さえ離れてしまえば、
女にとってはどうとでもなることだ。]
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[そして 女はその部屋から去っていく。 宿に戻れば使用人に言いつけて、 老人を診療所へと運ぶように命じた。 ――間に合うかは、わからない。
老人のポケットに、ひとつメモ書きを忍ばせた。 彼がそれを読むことが無くても、構わない。
「いつか、あの頃の貴方の元に帰ります」
記された署名は *アンジェリカ・ローズ*]
(74) sen-jyu 2014/01/01(Wed) 19時半頃
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― 牢獄にて ―
[老人はそのまま、眠り続けている。 それは、寒さのせいかもしれない。もしくは、もう、殴打と骨折により、脳はもう目覚めさせないことがいいと判断したのかもしれない。
ともかく、その貴婦人が過ぎ去ったあとも、老人は微動だにしなかった]
(75) nostal-GB 2014/01/01(Wed) 20時頃
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[診療所から、手当の面々が現れて、駆け寄った時、 その身体はすでに冷たく、硬直し始めている*]
(76) nostal-GB 2014/01/01(Wed) 20時頃
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― 最期にみたかもしれない夢 ―
[それは、ジェリーが去って幾年目かの時だった。 ティモシー、君を訪ねてきた女性がいるよ。
そう、聞いた時、 もう諦めていた、その遠い日の恋心が改めて熱をもった。
来店していた客に謝り、急いで店を閉め、港へ駆け出していく。 途中で何を急いでいるんだい、と声をかけてきた宿の女将さん、魚屋の嫁も首をかしげて、でも可笑しそうに笑った。 年老いた町長の馬車が正面から来て、こら、轢かれるぞと叱咤されても、帽子を抑えてすみません、と走っていく。
あの時、港はとても綺麗で、その空はそれまでのいつよりも澄み渡ってみえた。 白い息、空気は乾いていて、ややいがらっぽいけれど、それもいい。 石畳、何度も転びそうになったり、道行く人にぶつかりそうになりながらも、ただ、走って、 港につけば、神々しい船の姿。
ああ、あの時のときめき、心臓の音は近寄るにつれ、ばくばくと大きく鳴った]
(77) nostal-GB 2014/01/01(Wed) 20時半頃
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