22 共犯者
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おう、アンタが撰べばいいと思うぜ。
俺も次の獲物を見てるが、まだ決まってねえしよ。
[候補は種々。
我等に反するものか、力を持つものか。
それとも只、本能のままに襲うのか。]**
……そうか。
ならばこちらも勝手に選ばせて貰おう。
そうしてくれ。
ただ、決めた相手は教えてくれよ。
アンタの考えてる事を…知りたくてよ。
わりぃな。
ホントはもっとアンタと話してえんだ。
[俺だったら、今夜はオスカーかミッシェル辺りだろうか、と考えていた。]
―ヴェスパタインの工房・日中―
[テッドが工房に招かれる前か後だったか。
今宵の獲物に付いて、同胞と話す前――
珍しく「ヘクター」が彼の工房に現れた。]
…よォ。
すまねえな、こんな昼間から。
さっきラトルの娘に会った。
俺は、どうやら「視られ」ちまったようだ……。
[ 少しの間の後に答えが返ってくる。]
知りたいのなら。
俺はオスカーの姉妹を狙うつもりだ。
守りたいものを喪った、あれがどう変わるか見たい。
なるほど?
ならば、ラトルの娘の口を塞ぐか。
この先余計な力は使われたくない。
[ 淡々と声は宣告する。]
もしかしたら、俺は、最後まで
アンタの側に居られねえかもしれねえ。
ラトルの娘を一応は手なづけて置いたから、
今すぐ俺が狙われる事は無いと思うが…。
……あーあ、ドジっちまったよなあ。
なんだかよ、急に、
アンタの声が聞きたくなったのか、
アンタの匂いが嗅ぎたくなったのかわからねえが…。
気が付いたら、ここへ来ちまってた。
─昼間・工房にて─
[ 既に身支度を整えた彼は、じっと同胞を見詰める。]
何を気弱なことを……
[ 一笑に付したが、眸はそれ程笑ってはいない。]
[話している場で、ノックスが狼の血を引く者だったと言う話を聞いただろうか]
そうか、アイツが……。
[確かに、思い当たる節は有る。]
俺と対峙した時のあの少年の目。
覚悟を決めたあの眼は、
獣のごとき鋭さと気高さを確かに持っていた。
オスカーの姉妹?
「ホリー」か……。
俺はあの娘こそ
我らの血を引く者かと思っていたが。
確かに方割れを喪った少年が、
どの様に豹変するか、見てみたくはある…。
[マーゴを狙うかと告げる同胞の言葉を
じっと考えているようだ。
マーゴへの、一種言語化し難い感情が
ヘクターの中で無意識に揺れ動いて居るのかも知れない。
同胞の身を護るには…それも止む無し、
と言うのは理解してはいるが。]
[ 同胞の考え込んでいる様子を観察した後、]
──ならば一日猶予しよう。
お前の決心が付くように。
だが思い出せ。
儀式を完遂するには、あの娘も手に掛けねばならない、と言うことを。
[ それは事実であり、冷酷な宣言だ。]
[一笑する同胞に近づき、心を落ち着ける。
そして真剣な顔で真っ直ぐに彼を見つめると、口を開く。]
俺にもし何かあった時は、「キツネ」を頼れ。
アンタの命令なら、喜んで命を投げ出すような奴らばかりさ。
表向きには出来なくても、色々と今以上に援助できるだろう。
[ヘクターが墓地でマーゴに話した伝承は大筋事実であった。
実際、彼の家の人間をマーゴが視たならば、濃さの程度はあれ、同じような違和感を感じ取っていただろう。
中には、ヘクターの子を宿した女も何人か居るかもしれない。]
[ 同胞の瞳の奥の真剣な色を読み取り、
それを真正面から受け止める。]
──ああ。
[ 短い応(いら)え。
だが彼はどこまで同胞の言葉を守る気であったか。]
[同胞に、万一自分が先に還った時の事を伝える。
それは杞憂かもしれない。だが―――。]
ヴェスパタイン…。
アンタの肌に、ちょっとだけ、触れてもいいか?
俺は、きっと、たぶん、
アンタより先に………。
[それ以上は言葉にならなかった。]
[ 同胞を見詰める宵月の瞳は揺らがない。
だが。
無言で腕を開き、愛しいものを呼ぶように誘(いざな)った。]
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― 墓場 ―
[見たくない。 ヘクターの返事>>307にほっとしたのか表情が和らぐ]
怒っているのかな。 ――…ん、見つけて語りかければ、 はじめは話を聞いてもらえないかもしれない。 けど、諦めずに何度でも、語りかければ いつか、きっと、通じると思うの。
[わからないと紡ぐ彼にまっすぐな眼差しを向けて]
ヘクター、一緒に、変わっていこう。 ゆっくりでいいから、変えていこう。
[彼の協力があれば叶うかもしれない。 絡めていた腕をそろと離して、ね、と小首を傾げてみせた]
(313) 2010/08/03(Tue) 23時頃
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― 墓場 ―
[くちびるに触れる温度。 間近に迫るヘクターの相貌>>317 口接けられているのだと分かれば 恥じらうように目を伏せた。 はじめての事なのか羞恥に頬を紅く染めて]
――…ばか。
[ヴァンルナール家の墓前だから 何だかご先祖さまに見られているような気がして 余計に恥ずかしいのだけれど。 同じように、此方から触れるだけの口接けをして 照れ隠しなのか悪戯っぽく笑ってみせた]
(330) 2010/08/03(Tue) 23時頃
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[ヘクター>>324の礼にゆるゆると首を振るう]
疲れているのに…… 引き止めてごめんね。 でも、ヘクターと話せて、良かった。
[まだ日の高い墓所で娘はヘクターに笑みを向ける]
巡礼の時間まで少しでも休んで。 ……また、あとでね。
[死にたくない、と言う彼に同意するかのように頷き 小さく手を振り次の約束をして娘は墓場を辞す]
(331) 2010/08/03(Tue) 23時頃
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― 薄闇に包まれた広場 ―
[広場の大樹に身を委ね無防備に休む娘の姿がある。 ゆらゆらと舟を漕ぐ。 カクンと大きく揺れて、はっと目を開いた]
――…ん。
[ぼんやりと広場に灯る松明を眺め幾度か瞬きする。 既に巡礼者は集まりつつある。 自分も行かなくてはと思い大樹を支えに立ち上がる。 遅れて鐘の音>>#4が響いた]
もっと早くに起きるはずだったのに…… やっぱり疲れてたのかしら。
[ことりと首を傾げ遅れて森の方へと駆けてゆく]
(335) 2010/08/03(Tue) 23時頃
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[始めに腕に触れ、肩に触れ、長い髪の懸かった背に手を伸ばす。
やがて彼に抱かれるよう懐に入る。人の子とは違った感覚。
自分の心が落ち着き、また同時に湧き立つのを感じていた。]
オスカー、ホリー、オスカー……。
[夜の森で一人呟く。]
[ 広い背に腕を回し、近付いて来た肉体を抱き取る。
腕の中、招き入れた赤毛の同胞は彼よりも大きく、圧倒的な存在感を持っているのに、包み込むのは同胞ではなく、彼、なのだった。
そのまま、静かに腕の中の同胞に身を委ねる。
仰のいて、祝福を与えるように額に口接けた。]
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[結局、昨日と同じく娘は両手に何も持たずに森に入る。 明かりを持たぬのは木々の間から射し込む月明かりが綺麗だったから。 娘の体力では時間が経てば経つほど明かりの重さを感じてしまうから。 何かを気にしている風に見えるピッパ>>346を認めれば ゆると首を傾げる]
ピッパ、如何かしたの?
[問い掛けてからふと思い出したように]
あの、ね。 ヘクターがあんな事してしまったの、 やっぱり当主さまに言われてのことみたい。 私は、ヘクターはヘクターだと思うの。
[密やかに彼女にそう言ってみせる。 家の事、血脈の事は当人が語るのが一番だろうと そのことについては触れなかった]
(358) 2010/08/03(Tue) 23時半頃
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[ 彼が望めば、そのまま抱かれることもしただろう。
触れ合った同胞の汗の匂い、呼吸と鼓動の音に包まれ、『かれ』は宥めるように背を撫で続けた。]
[マーゴ・ラトル…
我らが宿敵の「視る者」の一族。
我らの敵、只の贄の筈なのに、
あの娘に覚えるこの感情はなんだ?
―――俺は、人に混じり過ぎたのか?
自分でも制御できない感情に戸惑っていた。]
ホリー・アレクサンデル…。
あの少女、何か恐怖を察知しているようだ。
我らの眼に気付いたか、それとも「人の手」が怖いのか――。
片割れが邪魔だ。襲う際に上手く引き離せると良いが。
[彼の眼は同時に樵の少年や白いシャツの女へも向けられていた。]
[ オスカーには、闇をも見通す捕食者の眼が彼の姉を見据えているなど、知る由もない。]
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――…殺したくない。 ……殺せないと思う。
[親はいないけれど大事な者を手に掛けるのはイヤで ピッパの言葉>>365にゆるゆると首を振るう]
そう、ね。 普通は出来ないかもしれない。 でも、……大事な者を守る為になら 私は、誰かを傷付ける事もあるかもしれない。 若し、目の前であなたに危険が及んだら…… きっと私は守り刀を抜いてしまうわ。
罪というなら、あの場所で見ていただけの私にも きっと罪があるのだと思う。 止められなかったのだから、同罪だわ。
[違いを聞かれればわからなくなる。 不安げに漆黒の眸が揺れた]
(377) 2010/08/04(Wed) 00時頃
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