194 花籠遊里
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―“丁”―
[花らしく、美しく咲き誇る花。 今目の前に咲く花と、似ても似つかぬ花。 余りにも美しく。 その蜜に惹かれたのは、蝶ではなく。]
――花籠を統べる、“私”。
[男はあの手この手を尽くした。 蝶の指名を幾度も防ぎ、 買い付けた金を与えず隠し、 三日に一度は“仕置き”と称し、 宵が褪めるまで狂楽に耽った。]
(117) あんび 2014/09/26(Fri) 20時半頃
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[やがて、花は一匹の蝶を求めはじめる。 蝶は足繁く通い、花を愛でた。
咲いた花の色香。 惑わされ、狂っていたのは男一人。
蝶と手を取り逃げる丁。
下らぬ夢物語など成就はさせぬ。
男は刃を付きたてた。 一面染まるは、沈丁花。
――否、狂い咲いたのは死人花。]
(118) あんび 2014/09/26(Fri) 20時半頃
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「もうし、わけ……ご、ざ、ませ……」
(119) あんび 2014/09/26(Fri) 20時半頃
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[今に還るは、強請る声。
自分を躾けろと足開く姿。
そこに咲く色は、朱。
揺れくゆる、焔。]
お前は、“丁”。
私の可愛い、“ちょう”。
[狡猾に理由を差し出しては
色を重ねているのだと言い聞かす。
そこにある色が別と分かりながら。
二度と狂い咲かぬよう。]
[懐から取り出すは、豪奢な万年筆。
丸みを帯びた細い棒。
先端汚した蜜を絡めとり、
開かれた足の奥へと滑り込ませ。]
さあ、自分で動かしてごらん。
ほぐすついでだ、できるだろう?
お前が飲み込むそれは
私が普段使っているものだよ?
ペン一本、すぐに飲み込むはしたなさよ。
中はどんなふうに締め付けている?
[言葉で詰り、行為で嬲り。
自らで動かせと手を離す。]
お前が自ら欲しいというまでだ。
見ていてあげよう。
私の可愛い―――…
[身体は花の所業に染まり、抵抗無く細いものを飲み込んだ。
白に濡れた先端は、面白いほどに滑る。
与えられた其れを握り、くちりくちりと淫音を奏で。]
形……を、覚えるよう、に。
ナカ、が、ッ……
きゅうと、なって……
[自らの身体を知る指先が、刺激を求め揺れ動く。
はしたなく、快楽に浸るべく。
嬌声を滲ませながら。]
っ……
嫌だ、嫌です、足りません……
このようなものでは、もう。
[満足できぬ身体なのです。
堪え切れずに、根を上げるのは、きっとすぐの事。
再び熱をもたげる雄から、とろりと蜜を滴らせ。
まるで涙のように。
認め、腕を伸ばし、求めたのは、――。]
[ けれど、僕は あの御方に逢うことが出来たのです。 ]
おかあさんのように
ぼくを
おいて、おいていかないで。
いいこにするから
わらっているから
なかないから。
はしたない、淫らな“ちょう”よ。
十分喜んでいるというのに、足らんと言うかい?
欲張りなものだねえ。
[嬌声滲ませ揺れ動く体。
痴態を晒す、焔花。
中を犯すは人の熱でなく、
無機質で冷ややかな万年筆。
男はゆらりと立ち上がる。
蝶が花を買い付けに訪れたなら
その秘所晒すように言いつけよう。
時には指先で溢れる蜜を掬い上げ。
喚く口の中へと運んでやろう。]
[知っている。
重ねる色が違うこと。
知っている。
造花の振りを望むこと。
―――“私”と“お前”は背中合わせ。
向かい合うことなど在りはしない。
あってはならない。
“ちょう”になりたい男と。
“花主”たる男なのだから。]
―――おいで、丁助。
[おいでと言いながら。
圧し入る熱は硬く。
初日花開かせたのと同じよう。
否、それよりも荒さは増そう。]
丁助。
[耳に落とす冷たい声。
氷の微笑は、歪んだ想い。]
“ちょう”。
[重ね合わせてすり合わせ。
穿ち貫いては、内へと爆ぜる。]
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飛んでなど、いかないでおくれ?
(163) あんび 2014/09/27(Sat) 00時半頃
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[雁字搦めの錆びた楔。
幾度も打ちつけ。
花を *手折る*]
あゝ。
煩わしさなんて、滅相もありません。
『花』でいられると謂うのなら。
僕はなんでもいたしましょう。
[その時の僕はどんな顔をしていたのでしょう。]
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