78 光環の戦溟 ― bloody searoar wars ―
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[運命《ラキシス》が、崩れゆく]
『運命を拒むか
だが、あれらの前に立ちふさがりしは我だけではない。
―――汝らの先行きに、幸多からんことを』
[そう、常と変らぬ声で告げ、二人を祝福したきり。
その声が聞こえてくることは、なくなった**]
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――ドゥ・シアーラ 街中――
[爆音。音は津波の直前に聞いたものに似ていた。 その爆風と同時、中空に舞い上がる人影。 吹き飛ばされたようでもない。ゆらりそこに浮かぶ人影の片方には、見覚えがあったから。 その近くまで駆け寄りながら、声を張る。]
南極星《セレスト》!!
(254) 2012/02/06(Mon) 00時半頃
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何処へ!
[行かなきゃ、という言葉が微か、南極星に注視を向けた男に届く。 傍らにいる天使がこちらを見やる。けれど、南極星は男の声も聞かずに、去っていってしまうのだろうか。 己は飛べぬ。ごく一般的なことだが、それを口惜しくさえ思った。]
お前は――
[南極星の手を取った天使に、地上《した》から声をかけようと口を開いた、が。]
(289) 2012/02/06(Mon) 01時半頃
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[背後からかかる声は、男を半ば反射的に突き動かす。 振り向いて同時に響いた声は、カトリーナではなく鳳凰《アリィ》のものだったが。]
『はァ? 連れてけって、ドコへだよ、コトバ喋れやニワトリ女ァ! 鳥頭じゃどこ行くかも忘れっちまったかァ?』
……。
[主語なき言葉に食いかかる龍とは反対に、男はその行き先を理解した。 理解したが故に、この場を離れねばならぬと歯噛みしたが、そも、己のはじめの目的でもあったために、苦く頷いた。]
――俺も、何処にいるか把握しているわけではないんだぞ。
[オスカー・アルドル。 アリィの気に入りだったし、浄化の焔《クレマツィオーネ》の話について知っているのも彼だ。 白燕尾のこともある。会わなければならないのは、明白だった。]
(292) 2012/02/06(Mon) 02時頃
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[宇宙《そら》の外、外宇宙《そら》のまた外かも知れぬ。 或いは、セカイの中心かも、果てかも知れぬし、頂きかも、底かも知れぬ。
何処か。
其々が、混沌《カオス》で隔てられたセカイ、其処にひとつだけ、星が浮かんでいる。]
(294) 2012/02/06(Mon) 02時半頃
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[太陽を内包し、中空の球となった世界にはあまねく光の加護があった。 太陽の光届かぬ土地はなく、肥沃で、豊かだった。
しかし生み出されたその光の星には、夜《月》がなかった。 煌々と照る太陽を、遮るものがない。]
(295) 2012/02/06(Mon) 02時半頃
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[生命ははじめこそ明るい世界を喜んだが、次第に疲弊した。 干ばつに麦も枯れた。水も乏しかった。
徐々に生体は淘汰された。 残ったのは乾きに強く、熱に強く。そういった屈強な獣ばかり。 やがて争うことすらやめ、己の身に適応したこの世界で暮らすだけだった黒龍が、戯れに高飛びをした。 如何に高くまで空に舞うか。その戯れの一環が、世界を変えた。]
(296) 2012/02/06(Mon) 02時半頃
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[ す ぅ い ]
(297) 2012/02/06(Mon) 02時半頃
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[天高く舞った龍は、太陽すらも横切り、翳りをもたらした。 ほんのわずかの時間であったが、この世に初めて訪れた夜であった。
その闇に龍はいたく驚いたが、同時にあたたかなやすらぎを覚えた。 夜の静けさを、ついに知った。
黒く硬く頑丈な、陽光の熱すら通さぬ鱗に覆われたこの龍族が、後に昏闇飛龍《ドンケルドラッケ》と呼ばれ、闇と影の守り神として称えられた、忘れられし古の龍族である。]
(298) 2012/02/06(Mon) 02時半頃
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[彼らは宵闇を求め、そして天空に大きな建造物をうちたてた。 動力は龍の星命《テュケー》。奇跡を起こしうる力が、空に夜《月》を作り出した。
それから、ずっと。 つい、先日まで。 そこに太陽と月は浮かんでいた。
誰にも語られることのなかった、創世の真実*]
(299) 2012/02/06(Mon) 02時半頃
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――ドゥ・シアーラ 港――
[さて、如何様に歩いた後であったか、覚えのある港にたどり着く。 近く少年の姿を見れば、物言わぬまま足音だけ立てて、歩み寄った。]
(301) 2012/02/06(Mon) 02時半頃
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『おチビこそ無事でよかったぜェ! ……にしちゃあ、ぼろぼろだけどよ。その――あのよ』
[はじめに声をかけたのはナシートだった。が、言葉はすぐに濁る。 白燕尾のことが引っかかったのだろう。]
そいつは?
[オスカーの手元、青い姿。 橙色の似た小人が、おそらくまだ肩にいたはずだ。 近い姿を見て、話題をすり替えた。]
(305) 2012/02/06(Mon) 03時頃
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落ちてきた……?
[自分の場合は、落ちていた、だったが。 つまりオスカーもこれが何であるかははっきりと知るわけではなさそうだった。]
『波を止めたァ? さっきのあの大津波をかよォ? その食いでのなさそうなチビが? ……そういやァ、こいつもさっき』
[大地は白燕尾を襲った。あれが、この小さな存在の中に内包されている、巨大な力だとするなら。 荒波を抑えるくらいのことは簡単なのかもしれない。]
――その、良平に、会ったよ。
[もう、襲ってくることはない。 それをこちらから口にすることはなかったが、オスカーの言葉の同等の部分で、ゆっくりと頷いた。]
(307) 2012/02/06(Mon) 03時半頃
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[歪む顔が見える。 消えたというのを、偽善じみたエゴで否定する心算はない。 ここには本来、アリィの目的だけでなく、それを伝えに来たのだから。]
良平「も」――?
[言葉を素直に受け止めるなら、光一、という友人「も」消えたことになる。 同じ末路を辿る、友人というのはそうまで悲劇的《トラジェティー》なものだったろうか。]
塵のように……崩れて、解けて。 本来ならほんの一瞬でもお前に会わせてやらなければならないと思っていたんだが。 すまない。
[頭を下げるのは二度目だ。 少年の前で、長躯が折れ曲がる。]
(309) 2012/02/06(Mon) 04時頃
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俺はあいつを止められなかった。
[もしも、あの双剣が振り下ろされて、大鋸刃を少しでも弱めたなら、結果は違ったのか。 攻撃を繰り出す良平の、その全てを受け止めるままのほうが、よかったのか。 問答はもう意味をなさない。]
『……。』
[あちらの最大限の攻撃に、こちらの最大限の攻撃をもって応えた。 戦いにおいては最大の礼節だと思っていた。 それをどこか悔いているのは、何故なのか。男の中でも整理がついていない。
なにが、いけなかったのか。]
……俺にも、わからんよ。
[空を見上げた。 雨が降っていた。]
(312) 2012/02/06(Mon) 04時半頃
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ケヴィンは、カトリーナの様子をそっと見やった**
2012/02/06(Mon) 04時半頃
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