103 善と悪の果実
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[ポーチュラカと別れたのは、もう一度、近くでじっくりと 果実を眺めたいという気持ちが湧き上がっていたため。 そうして人垣に近付こうとした時。
>>126沈黙とざわめきが、波紋のように広がるのを見た。 刺青の男の不機嫌な声が、空気を支配したかのように。 男が睨み付ける先には、夕闇伯。 こちらも剣呑な雰囲気を醸し出している。]
…どうしたのかしら…
[仔細な会話までは聞き取れていなかったが、 仮に一目見ただけの人間であっても、 この二人が正反対の性質を有している事は 想像に難くないだろう。
秘宝の前で、これ以上の悪態を吐くことも無いだろうと 気を取り直し、様子を見るために、近付き過ぎない程度に 壇上前へと歩み寄って行く。]
(137) 2012/09/25(Tue) 21時頃
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[>>136どうだった?と問われれば]
素晴らしかったですわ。 美しさは勿論の事、心奪われる不思議な魔力を 持っているようで…まさに、禁断の果実と呼ぶに 相応しいと感じました。
…オスカー様は、お優しいのですね。 あの果実も、きっと、歌えないことを悲しんでいるのでしょう… 私には、あの果実をどのようにすれば歌わせてあげる事ができるのか、分かりません。 ただ、いつか歌えるその日まで、生き長らえることができるよう大切にしてあげて欲しいと… グロリア様なら、きっとそうして下さるでしょうけれども。
悲しみで萎れてしまう前に、あの果実に音を届けてあげたいですわね…
[俯き、少しだけ寂しげに微笑むが、すぐに表情を取り戻して]
そんなこと。オスカー様のお話、とても興味深いですわ。
(140) 2012/09/25(Tue) 21時半頃
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[館の主の名前を出した時 はたと、大広間に通されてすぐの挨拶の後 一度も栄光の姿を見かけていないことに思い当たった。 何処に行ったのだろう、というぼんやりとした疑問は しかし、そのまま誰に問い掛けるでも無く。
閉ざされた世界で与えられた煌びやかな時間を享受し その外で進む事態に気付くはずも無かった。]
(142) 2012/09/25(Tue) 22時頃
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[>>141青年の言葉に、そうですよね、と相槌を打ちながら、 続く否定の言葉に困ったように首を傾げる。]
…だって、あの黄金の果実の事を可哀想だと言う方って なかなか居ませんわ。 ついつい、眩しい姿に目が行ってしまいがちですもの。
[青年の言葉の奥底にある考えには思い至る訳も無く。 ただの謙遜だと受け止める。]
(148) 2012/09/25(Tue) 22時半頃
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>>143 機巧にはお詳しそうですけれど、それでもやはり、分からないものですのね…
[現代の技術では届かないという、謳い文句通り。]
ええ。その日が来ることを、願って止みませんわ。
[青年が本心を隠そうとしている等と思ってもみず、 戦慄にも気付かず。 だが、呟きにはしっかりと答えた。]
禁断の果実に手を出せば、罰を受けるに決まっていますわ。 そんな人は居ないと思いたいですわね。
[似合わない、と言われて、今度はしっかりと微笑む。]
…ありがとう。
[否定されそうな気がしたので、そういう所が優しいのだと思う とは、心の中で言うだけに留めておいた。]
(149) 2012/09/25(Tue) 22時半頃
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>>150 珍しいけれど、変、ではないと、思いますの。 [青年の真意は見えずとも、 そう間違った感想では無いだろう。]
私、ですか?
[どう説明したものか、少しだけ逡巡して]
…今は、お休みしているんですけれど。 歌い手をやっておりましたの。 お褒めに預かり恐縮ですわ。
(154) 2012/09/25(Tue) 23時頃
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[>>145何かに気付いたようなオスカーの視線があった方を 見遣ると、テラスで話していた組み合わせの二人がいた。 綺麗なストロベリー・ブロンドは仕舞われてしまっていて、 勿体無いな、と思う。]
(157) 2012/09/25(Tue) 23時頃
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[>>158深く追求しないでいてくれた事に感謝しつつ]
ありがとうございます。 果実が歌う事を思い出した時には、きっと 素敵な音を奏でてくれるのでは無いかと思っていますわ。
オスカー様にも、あの果実の仕組みが解明される日が訪れますよう。
[適当な所で会話を終えると、一礼し、喉を潤すために 飲み物でも貰おうかと使用人に声を掛けるだろう。]
(160) 2012/09/25(Tue) 23時半頃
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[烏の眸は射る。
そこには冷たい憎悪と羨望を持って。]
……………。
[言葉はない。
ただただ、“男女”と思わしき二人を見詰めている。]
[ただ、"蛇"はその強い眼差しに灯る意思を感じて]
――――――――…ふふっ。
[小さく、小さく、笑ったのだ]
[黒い蝶が、羽ばたいている]
……… ぁ
[小さく洩らした声をかみ殺して、唾を飲み込む。
赤い蝶が眠る薄紅よりも、ずっと鮮やかな流れるストロベリーブロンド。
近くで見ればそれはやはり同じようで
でも自信がなかった。
赤い蝶を起こして確かめる気はなかったけれど]
……ええ もう随分よくなりましたの
[少し強張った笑顔。
今はまだ、見送るのみで]
…………ふっ。
[笑みには笑みを。
黒く塗りつぶされ、光さえ灯らぬこの眸に
“蛇”のような女の顔を刻み込んだ。]
[少女の髪の赤へ。
そして林檎と似た色の髪へ。
その視線の先。
――否、その眸。
甘い林檎の蜜を啜ろうとする、そんな眸を烏は捕らえる。
微笑を向けたのは、扉をすり抜けるほんの一瞬前。]
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