137 海の家 『nave Di mare』
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次に、グローリアさんが。
固い口調、アタシは嫌いじゃないな。
小説家さんなんだって、素敵ね。
海の家の部屋のこと、気に入ってくれたみたい。
最後に来たのはジェニファーさん。
お姉さんって感じの女の人。
とってもフレンドリーで、さっぱりしてる。
でも気を使ってくれるこうな、素敵な女性。
今年も、あの人はこなかった。
5年も前に一度来ただけなんだから。
きっともう会うこともないって、わかってる。
だけど、会えたらいいと思うのは。
まるでシレーナの歌声に、魅せられてしまったのね。
叶わない思いを歌う歌鳥みたい。
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[ぱたり、臙脂の表紙をそっと閉じる。 ひとつだけ息を吐いて。 剥げた箔押しを指でなぞって。]
さーて、珈琲でもいれようかな。
[赤い冊子はそのままに。 立ち上がり、向かうのはキッチン。 珈琲をいれて、テラスに。]
(97) 2013/08/16(Fri) 00時半頃
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―テラス―
あら、シレーナが歌ってるのかしら。
[どこか遠くの国で、叶わぬ愛を歌うとされる鳥の名前。 歌が聞こえる方を向けば、アタシの可愛い従姉妹が歌を歌っているところかしら。
手摺に手を駆ける。 肘をのせてカップを手のひらで包んで。 風が吹く方向へ視線をやれば。 トレイルくんがベンチに座ってる。]
………。
[声をかけるべきかしら? 纏う雰囲気がいつもと少し違う気がして、見つめるだけにしてるけれど。]
(98) 2013/08/16(Fri) 00時半頃
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………あら、誰と勘違いしたのかしら。
[少し首をかしげるの。 やっぱり、その雰囲気は食事の時みたいな元気さはなくて。 中途半端な姿勢も、此方に振られた手も元気がなく見えた。]
夢だったら、会いたい人でもいた?
[そう云って緩やかな笑顔を向けて。 それからわざと、顔を空へと反らしたの。 アタシが顔をそらすことで、トレイルくんが会いたい誰かの幻になれるかもしれない。 浮かぶ星を、アタシは見詰めてる。]
(100) 2013/08/16(Fri) 01時頃
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トレイルくんには、いないの?
[会いたい人、いないなんて言うから。 妬いたとかよりも驚きの方が強くて、アタシは彼の方に顔を向けた。 星からは少しだけ目を離して。]
………ん。 夏以外、お休みがとれなくて。
[アタシはこの海の家を毎年開けるために、別のところからやって来ている。 違う仕事をしていて、そしてそれは誰にも云ったことのない。]
(112) 2013/08/16(Fri) 02時頃
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