49 海の見える坂道
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[ヴェスパタインの誕生日。
家にあった古い本は、誕生日の贈り物の筈だった。
けれど、今は用をなさないそれ。
彼の誕生日にできることは…まだわからない]
酒の一つも飲まないと、やってらんないっつーの
[人の死や、別れは悲しいとは思わない
いつかそんな日が来ると、俺はいつも覚悟していて
旅に出る時は、毎回今生の別れのつもりで歩き出す
だから、ヴェスの事はショックだったが、悲しくはない
悲しいのは…―――――]
[ちらり。視線をヤニクに向けて見た。
別に意味はない。多分、知っているのだろうけれど触れられない話。小さな声で、伝えることは]
…ヤニクは帰ってきてくれてよかったよ。
うん。よかった。
ん・・・?
[ネルも、同じ事を俺に言った
無事に帰って来て、良かったと
まったく、本当にどいつもこいつも]
そりゃ戻ってくるさ
ここが、俺の生まれた場所で
ここが、俺の死に行く場所だからな
心配しなくても、ヴェスの事ならもう聞いたよ
そう。
[ミッシェルが一緒だったことはそりゃ知ってるのだろう]
人がいなくなるのは寂しい。
それだけだよ。
[くい。一杯流し込むシェリーは、喉にとても熱かった*]
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ゾーイ君は、……強いね。
[赤と紺が混じりあい、紫のヴェールに覆われかけた空を指す少女は、さいごの光を背負って眩しく。 途切れた言葉の続きは分からないけれど、『良い子』と言いかけたのを何となく止めて、きらりと光を弾く髪を撫でた。 ちょっと磯臭かったかもしれない。
彼女がサイラスと宿へ向かうなら、エスコートよろしくね、と彼へ向け]
…… ふふっ。大丈夫だよ、年を経ようが、サイラス君は変わらない。
[フォローなのかどうか。 笑みを残して、ぽんぽん肩を叩いて、自分の家へと]
(8) 2011/04/11(Mon) 01時頃
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[その後。 半時ほど遅れて、両手に皿を抱えて酒場へやって来た頃には、もうかなり、場は出来上がっているだろうか。 テーブルに、持ってきた皿を並べ、取っておかれていた席があれば、そこへ腰掛けて、いつものように甘いアルコールを適当に頼む。
持ち込まれた皿の、唐揚げとカルパッチョの数が、ちょうど人ひとり分、少ないことに誰かが気づくよりも、肴として消えていくほうが早いかもしれない*]
(12) 2011/04/11(Mon) 01時頃
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童話作家 ネルは、メモを貼った。
2011/04/11(Mon) 01時頃
だな、それだけの事だ
人生の殆どの時間を、共に過ごした何かが
気がついた時には、無くなっている
そう言うもんだとわかっていても、寂しいもんだ
ただ、それだけの事だ
[カラン、とグラスの中の氷が、音を立てて]
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―― 『mer calme』にて ――
やあやあ、盛り上がってるね――…えっ!?
[いつもの面々が揃っているなと、眺め回した酒席にて。 思わぬ顔>>20を見つければ、取り分けていた唐揚げが、ぽろり落ちた]
せっ……セシル君!? 本当に!
[柔らかな亜麻色にくるまれた、目鼻の形良く配置された顔。 何より、漁師の家に生まれ育った自分とはちがう、繊細な動きをする為のしなやかな手指。思わずその手をとり、じ と見つめた。
はじめまして、と差し出された手を、今も覚えている。 あの時と同じ、しなやかさを伝える手。
ふいに、頭の奥で『星に願いを』の旋律が優しく響いて。 また涙が零れそうになったから]
(43) 2011/04/11(Mon) 10時半頃
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………いらっしゃいっ。良く来たね、セシル君! 是非、時間が許せば、ゆっくりしていって。
[再会の喜びだけでなく、別の戸惑いも浮かぶ瞳に、ああ、もう知っているのだなと思えば。 ぎゅう、と小柄な身体を抱きしめて。 肩に顔を埋めて囁いた]
ここは、とても、星が綺麗な町なんだ。 ―――知っての通り。
案内したいところも、見せたい景色もいっぱいあるけど、まずは――…飲もっか。一緒に。
(44) 2011/04/11(Mon) 10時半頃
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へえ、あの中折れの。ふふ、彼の尻尾はなかなか前衛的だよね。
[町に着いてからのセシルの話などを肴に。 てろりと赤い酒の揺れるグラスを傾けて、程よく酒精に染まった頬で、ふにゃり笑う。 彼女が自分と会えたことを、我が事のように喜んでくれたラルフからは、時計塔の一件を聞けただろうか。
そうして、陸でのいつもの夜を過ごしていれば、ふいに彼の肩へ伸ばされる手]
サイモンさん。お久しぶりです!
[ラルフへ何事か告げて去る彼に、ぺこりと挨拶をして。 ヴェスパタインと、何処か雰囲気の似たその背を、何とはなしに、ぼんやり見つめていたが]
(45) 2011/04/11(Mon) 10時半頃
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…… ?
[つ、とテーブルの上を滑った指が、何かに引っかかる。 良く手入れされた其れに、ささくれも無いだろうと目を凝らせば]
『世界の果ては、ボクたちのすぐ近くにつながっている』……?
[何処かで聞いたことのあるフレーズ。 見たことがある彫り跡なのは、この町の誰かが刻んだからだろうか?]
あ、ねえ、オスカー君。ちょっと良いかな。
[気づけば、酔いの喧騒に代わって『カントリーロード』の音色が響いていた。 給仕を求める声も疎らになった頃合なら、彼の手も空いていたか。 疲れた様子なら、大丈夫かな、と声を掛けてから、机を指し示し]
これ…… 何だろう。オスカー君、分かるかい?
[少年の答えが何であれ、礼を言って暫し、考え込んだ]
(46) 2011/04/11(Mon) 10時半頃
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[やがて、音色も止んで、しん と夜の静寂が訪れる酒場にて。 テーブルを戻し、片づけを手伝って軽く掃除をし終えた手を、ぱちぱちとちいさな拍手のかたちに変えた]
好い演奏をありがとう。 ……ピアノとギターの一緒に聞ける曲とか、無いのかな…… って、ベネット君? 大丈夫かい?
[ぽつり呟いていた視界に、目を瞑ったままふらふら歩き出すベネディクトの姿が入る。 行き倒れたという話も聞かないから、大丈夫なのだろうけど。 時期が時期だけに心配だから、家まで付き添って行くことにして、宿屋を後にした*]
(47) 2011/04/11(Mon) 10時半頃
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童話作家 ネルは、メモを貼った。
2011/04/11(Mon) 10時半頃
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―― 昨夜 ――
ただいま! ラルフ君もジジ君もご健勝で、何よりなんだよ。
[ラルフの声に>>48、目元をセシルの影でこっそり拭い。 彼女との再会で貰った元気で挨拶を返した。 自分の顔を見て、ジョッキの中身が心配になる勢いで何故か驚かれたのには、目をぱちくりとさせたけれど。 逸らされた顔には、気づかなかった。
酒宴のお開きになった頃、まだ彼やミッシェル、それから誰かが眠ったままなら。 起こそうと声は掛けるけれど、わりとすぐ諦める。 いつものことと呆れ顔をしているだろう主人に、毛布の予備を貸して欲しいと頼んで。 各々の肩に掛けておいたんじゃないかな*]
(57) 2011/04/11(Mon) 13時頃
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―― 墓地 ――
[身体に染み付いた早起きは、酒が入っていても変わらず。 響き渡る鐘の音に、一斉に鳥の影が薄明かりの空へ羽ばたいていくのを、すっかり目覚めた琥珀いろに映して見送った]
やあ。美味しかった? 『mer calme』のお料理も持って来たら良かったかもしれないけど、どちらかと言えば、食べられるひとが食べるべきって言いそうなんだもん、きみ。
[真新しい墓石の前には、昨夜供えた唐揚げとカルパッチョ。 このままにしておいたら、守り人の手を煩わせてしまうから、紙に包んで鞄へ仕舞う]
昨夜はね、サイモンさんが奢ってくれたんだよ。 あのひと、何にも言わないんだもの。お会計のとき、びっくりしちゃった。
そういうとこも、似てるよね。 きみがサイモンさんに似ているんだろうけど、ぼくにとっては、やっぱりサイモンさんが君に似ているって、思ってしまう。
[みずみずしい花に囲まれた墓。 きっと、一月の間、絶えることなく足が運ばれているのだろう。 朝露に濡れる花びらが、ぽつん、と落ちてきた雫を弾いた]
(58) 2011/04/11(Mon) 13時頃
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……―― 海に居る時は泣かなかったんだよ。 だめだな、陸に上がると、泣き虫のコーネリアに戻っちゃうんだ。
[血を見るのが怖くなった。最後に彼の声を聞いた場所は、遠回りでも避けてしまう。 子供に戻ってしまったような、年を取っただけ性質のわるい臆病さに、また泣きたくなる。
幼いゾーイですら、あんなに強く在ろうとしているのに。 悲しみは皆同じなのに、自分ばかりが弱く思えて、情けなさにくちびるを噛む]
ヤニク君がね。帰って、きたんだ。知ってるかな。 嘆かせてしまったよ。ヴェスのこと、腫れものに触るみたいに扱ってるって。
……――君にも、同じこと言われてしまうかな。ごめんね。
[さくりと、湿り気を帯びた朝の土を踏んで。 墓前から踵を返した。
そうして、夜に通り掛った時、懐かしむような、安堵したような優しい眼差しを彼が向けていた、ベンチに。 何とはなしに腰を下ろすと、明けてゆく町並みを、眺めていた*]
(59) 2011/04/11(Mon) 13時頃
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[家を出る前に、一枚の紙にいくつかの文字を書き付けて。
それを丁寧に紙飛行機に折り畳んで自分の部屋から飛ばしてみた。
ひらりひらり。
紙飛行機は気まぐれに。
誰のもとへ飛ぶのだろう]
[薄削ぎカピスに水牛の角、色鮮やかな薄絹と、レースのようなカンティーユ。
燈る火どれも同じ色
けれど蛍火輝く虹色に。
花の如くなランタンは
まるでお城の舞踏会
そんな燭集めたら
きっとお空の天使も喜ぼう]
[童話のようなその下り、
いったい誰に届くやら]
[紙に書かれた、童話のような言葉
馬鹿らしい、と鼻で笑ったのはいつもの事]
天使なんか、いやしねぇよ
[神や仏がいるのなら
本当に、本当に
心から祈った時に、手を差し伸べない者が神ならば
俺は神など信じやしない
一番苦しい時、悲しい時に
何もしてくれない者が仏ならば
俺は仏など必要としない]
だが、まぁ
やってみっかな、東の国の灯篭流しみたいに
海辺に浮かぶランタンで、救われる魂があるとするのなら
聖者の行進に、加わる事は出来なくても
星に願いを、かける事くらいは出来るだろう
[青年は一つ、ランタンを持つ。
まだお互い少年だったあの頃。
初めて会った時。
母が綺麗とほめてくれた自分の翠。
だから翠が好きだといったみた。
誕生日に貰ったのは、
淡いペリドットのような小さなランタン。
時々ともすティーランプ。
少女趣味は無いけれど、
夜の灯りに丁度良く。
大事にしていたそのランタン。
火を灯さなくなったのは
命の火が消えたあの日から]
|
――そっか、今日って土曜日か。
[いつの間にか、うとうとしていたようで。 ラジオの声に、はっと顔を上げた]
漁に出てると、曜日感覚なんて無くなっちゃうからなあ。 じゃあ、昨日が、金曜。
んん……、確かに、暑くなりそうだ。 蚤の市を冷やかしついでに、冷たいものでも食べに行こうかね。
[時折雲をちらつかせながらも、照りつけるのを予報された太陽に向かって、伸びひとつ。 ベンチから勢い良く立ち上がると、ズボンを払って、ゆったり坂を下ってゆく]
そうだ、セシル君は蚤の市のこと知ってるのかな。 誘ってみようか、ああでも昨日の様子だと、もう誰かにお呼ばれしているかも? 聞きに行くだけ行ってみようか、ねえ……
ああ、考えていることを口にだしてしまうのも、止めないと いけないね。
(101) 2011/04/11(Mon) 22時頃
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[ぱたりと、傍らの何かに触れようとしたかたちの手を下ろし。 顔を俯けると、足元をすり抜けてゆく猫]
? ……ん?
[一匹なら珍しい光景でもない。 でも、なにやら、結構な数の猫が、坂を下ってゆくような……?]
なんだろう。真昼の猫会議かな? 水揚げの時間じゃあなし…… のわああ!?
[広場のほうへ視線を投げていたら、足元が疎かに。 道端で蹲る人影に気づかなくて、盛大に足を引っ掛けた]
(102) 2011/04/11(Mon) 22時頃
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ネルは、足を引っ掛けてしまった人影がサイラスなら、何してたんだろう、とばかり、きょとんとする。
2011/04/11(Mon) 22時頃
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ご、ごめん。大丈夫かい?
[飛びのいた先に、ちょうど良い着地地点だったのか。 左胸に飛び込んできたジジを反射で抱きしめたまま、どきどきどきと速い心臓の動きを落ち着けようと、息を吐き出してから尋ねる]
手、擦ってしまったかな……? 吃驚したのは、ぼくもなんだけど、こんなところで何してたんだい。 医者の不養生?
[具合でも悪いのかと、右手をぺたりとサイラスの額に当てようとして]
え、せしるく…… !?
[声に応えて、振り返ろうとすれば、横切る影。 咄嗟に、5 偶数:セシルを抱きとめようと手を伸ばした 奇数:驚いて、ぺいっとサイラスの額を押しやってしまった]
(116) 2011/04/11(Mon) 22時半頃
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ネルは、あっ。 [ぺいっ]
2011/04/11(Mon) 22時半頃
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わあぁぁあぁあ! セシル君、サイラス君!!
[けっ こう、痛いおとが した。 恐る恐る目を開けると、ぺしゃりと坂にスタンプされているふたり。 半泣きで叫ぶと、とん、と物静かにジジは腕から降りて、ふさりとした尻尾がサイラスの頬を小突くように揺れた]
ごめん、ごめんね! セシル君、痛いとこない? サイラス君、サイラス君、……わぁああん、死なないでサイラス君ー!
[本泣きになって、二人の肩をゆさゆさ揺する。 ぼろぼろと、琥珀色から零れた雫が、地面のいろをぽつぽつと染め]
(121) 2011/04/11(Mon) 22時半頃
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自分だけだと思うなよ。
お前、勝手に旅に出て、知らなかったからってスネてんのか?
[すれ違いざまに呟く言葉]
だったら、少しでも悼んでやろうって気持ち、ないんかよ?
だから何も、わかってないっつってんだよ
俺がどんな人間なのか、わかってないから
俺が何をしているのか、わかんねぇんだ
[馬鹿らしい、本当に]
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ジジが……?
[ひっぐ、としゃくりあげながら、サイラスの避ける指に、ていてい、とじゃれつこうとするジジを見つめ、ひっく]
うん、確かに……ひっく、ジジなら、っく、出来るかもしれない、 なんて…… ラルフ君に今度、きいてみよう、ふぇっく……。
[セシルに肩を揺らし返されれば、やっと涙もおさまる気配。 よかった、とぐすぐす涙声で呟いて、ふたりをぎゅぅうと抱きしめ。 彼女がサイラスへ手を貸すのを見れば、また、すり、と腕に近づいてきたジジを抱えて立ち上がった]
(128) 2011/04/11(Mon) 23時頃
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別に、それでいい奴はそれでいいよ
その他大勢が、皆思う事だ
流浪者、悪人、見た目や風貌だけで、皆そう思うだろう
そっから一歩、内面に踏み込んだ奴が友人で
踏み込まないまま、行動や格好しか見やしないなら
友達と呼ぶには、足りねぇよ
[だからこそ、ヴェスは俺の友人だった
俺は奴の友人であろうとし、奴は俺の友人であってくれた
悼む気持ちがない? 馬鹿にしやがる、本当に]
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