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【人】 地下軌道 エフ――― 部屋から ――― (45) 2015/08/05(Wed) 20時頃 |
[強奪した酒の代わりを、
手際よく店主がグラスに仕立てればそれも横からかっさらう。
ホレーショーとトレイルでは、
肝臓の機能が大人とこどもほどの差があるのだが。
それでも彼の酒を求めるのは、ひとえに美味いから。
――その濃さ故、ひとくちで満足できるからという理由もある。]
おー…イイ匂いしてきたねえー
[休日手当についてはよろしくーと片手を挙げ。
覚束ない足取り、語尾を蕩かせてもモップ掛けくらいは可能で。
そのうち厨房から香ばしい香りが漂ってきた。
既にアルコールでふわふわの頭で食事をすれば、
血液は消化のために胃に集まり、益々回転が鈍るだろう。
だからといって、食べない選択肢はない。]
コテツー。休憩しよー
[変わらず力仕事をメインに働いている彼へ手招きして、
人間ふたりと、小鬼と、蛇男。
テーブルを囲う面子は何とも奇妙で、むさ苦しいが
今に始まったことでなし。
さすがにワインはやめておこうと、
気に入りの炭酸水をグラスに注ぐ。
茶色をまとったキノコからは芳醇なバターの香りと、
こくのある塩気。]
これが、前に言ってたやつ?
[東洋の神秘、ショウユとバターの融合は、
キノコから滲む旨みと合わさって、成程酒が進む味だ。
オイルパスタも美味い。]
[食べ終わったら食器を洗って、
再び床やテーブルを磨くが動きは更に緩慢になるだろう。
ホレーショーが煽るグラスの中、氷が融ける音には、
瞬き程度の反応をみせて。]
そーそー
東洋の神秘、バターショーユ
誰から聞いたか忘れたんだが、結構旨いんだよコレが
[トレイルに笑って返す]
俺もさー、日本行ってみてーよ
ニンジャとゲイシャがおもてなしとかしてくれんだろ?
[旅好きの蛇も、さすがに日本まで出向いたことは無いようで]
………そこなら、さ
[居るかもしれない。
目の前の人間達を置いていった、奴らが]
[床に何もなければ、酔っぱらいでもモップがけに支障はないらしい。
まずは乾いていく床に満足げ頷いて、漂うバターの匂いに生唾を飲んだ。
小鬼の食生活は、基本人間とあまり変わらない。となれば、この匂いに腹減らすのもまた、同じ。
休憩の声が掛かれば頷いて手を休めた。]
[天邪鬼の家には実家――この国にあるにも関わらず、純日本人の夫婦が住んでいる――から分けられた調味料と、炊飯器がある。
自宅で昼飯を食べるとなれば、アジアンマーケットに出向いてはコメを食べることも多い。
親しんだ醤油の味の、コメの欲しくなることといったら。
けれど酒でも充分美味い。杯が進む。]
ニンジャ、ゲイシャ……
[片手の指でも充分すぎるほどだが、かの国に行ったことはある。幼い頃の話で記憶にも薄いが、少なくともその時に、それらには出会わなかった。
加えて、ニンジャが架空の存在だということも知っている。]
いるよ。
[ただ、酒の力はいないと否定する言葉を、鏡に移す。
無闇な夢を与えたかもしれないが、この顔ぶれがどれだけオレの言葉を額面通りに捉えるか。
ケイの続けた僅かなセンチメンタル
………
まあ、いつか行ってみっか
休暇何日になるんだろうな
アジアンフード巡りとかしてみてえしな
[隠居したのなら、それを探すのはご法度。
そうは分かっていても。
友人を巡りながら、かの人狼達の足跡を辿ろうとする蛇がいる]
日本、かあ……
[多くはないが、多少は知っている東洋の地。
憧れと興味がないわけではないが。]
ゲイシャ、って何するひと?
ニンジャと……サムライはー?
[定期的に食材調達で方々に出向くケイもまだ知らないという。
この中では一番詳しそうなコテツに、
昔養父に教えてもらった東洋の騎士の存在についても尋ね。]
――…居る……?
[ゲイシャが。ニンジャが。サムライが。
姿をくらました人狼が。――冷を纏う、精霊が。
世界のどこかに、もしかしたら日本に。
居るかもしれないという願望は勿論抱いている。でも]
そー、だね。そのうち
あっちのレイコーも飲んでみたい、し
[ケイの提案に、本人ほど朗らかには笑えなかった。
探して、見つからないことが怖いとは、言えない。]**
[人の世の短さについては充分すぎるほど知っている。
ケイや、コテツの人生の中では、信号待ち程度の。
ただ、待つだけで終わっていいのか。
もどかしい気持ちはあれど探しに、会いに行く勇気は――無い。]
じゃー、いつかのための社員旅行に向けて
働きますかー
[数えきれないほどの生と死と出会い、
別れて生きてきただろう彼らの達観が時に羨ましく、眩しく。
ケイの真意や、ニンジャが実在するかは別として。
希望ある未来を語ることは楽しいと、目を細め。
フォークとナイフを、モップに持ち替えた。]**
…欲しいなら作るのに。
[そう連続で没収
手は離れて行ったグラスを名残惜しそうに追いかけて、顔は大変残念そうになっている。
といっても実際の所そう大してショックは受けておらず、落ち込んだ様子は全て演技。その辺りは付き合いの長い店員達の事、簡単に見抜かれていたかもしれない。
その後は、流石に真面目に掃除を再開しただろう。*]
[周囲がワインを飲まずとも、自分は自分で勝手に開ける。
肝臓の強さはそれなりで、アルコールもだいぶ好きだ。かなり好きだ。
故に呑む。ワイン開ける。
オイルパスタには、きっと白がいい。しかしソイソースことショウユには赤が合いそうだし、さて困った所。
二本開けてしまおうにも、自分以外の者が飲むかどうか。
…いいや、どっちも開けちゃえ。
奥から引っ張り出してきたのは店で振る舞う用のボトルだったし、きっちり保管して客に出してしまえばあっという間に消費されるのだ。
そうでなくともこの季節、冷えたサングリアと言うのは大変人気で、ワインは多いに越したことはない。]
へえ、バターショーユねえ。
もし店の定番メニューに入れるなら、
これに合わせて、ニホンシュも仕入れようか?
[ニホンの酒はアジアンマーケットで見るには見るが、良質な物となると中々こちらには流れてこない。
あの小さな島国からはるばる来る客も居る事だし、メニューに組み込んでもよさそうだ。
ニホンシュを使ったカクテル等もあるようだし、その辺りは、要勉強。
合うつまみはケイ店員に丸投げして、自分の本分は酒に関して。
開けたワインを煽りながら、さて他の者達は酒を飲むかな。]
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