人狼議事


223 豊葦原の花祭

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[一分。一秒。

長く咲きたい。
それは淡墨桜の望みだった。
散ってしまうのは、終わりが来るのは、どうしたって仕方が無い。そういう風に出来ているから。

だが、散ってしまえば自分の姿は人目からは掻き消えてしまう。
理由なんて分からない。けれど、葉桜や、落ち葉や、冬枯れの桜を愛でる者などそうは居ない。

恐らくそういう事なのだ。
そういう、役割、なのだろう。と。

だからこそ、一秒、一瞬、ひと目でも。長く咲いていたかった。散ってしまうのは、終わってしまうのは、仕方が無いことだ。

仕方が無い、けれど、]



寂しい。

寂しい。

寂しい。



どうしたって。


【人】 町娘 小鈴

─伊那の淡墨桜─

[昔むかし。
淡墨桜が、まだただの桜の若木だった頃。すぐに散る桜よりも、花も長く香りのある梅が好まれた時代。

少しばかり色味の珍しいその桜を、大層愛した歌人がいた。
葉桜の夏も、葉も落ちる秋も、木枯らしの冬も、元気か、枯れてはいまいか、また綺麗に咲いてくれるかと。
お節介なほど世話を焼き、飽く迄話し掛け、そうしてよく、詩を詠んでいた。

季節が何周か巡り、桜の幹も太く育ち枝ぶりも大きく、随分立派になった頃。
時節に流され立場も変わり、その地を去ることになった歌人は、桜の若木に『必ず帰る』と身勝手な約束を置いて、そうして二度と帰らなかった。

桜の若木が、歌人が死んだことを知ったのは、彼がその地を去ってから、半世紀も経ってからだった。]

(93) roki 2015/04/26(Sun) 00時半頃

[死というものがなんなのか、木である己には分からない。
だから、葉桜の夏も、落ち葉の秋も、木枯らしの冬も。待ち続けた。
途中、違う場所に植え替えられる事になったのは、とても困ったけれど。どうすることも出来ないから、せめて人目につくよう、大きく育ては良いと思った。

慎重に枝葉と根を伸ばし、光を沢山浴びて、色を幹の内に溜め込み、春には精一杯、美しく。
一番きれいに咲いたなら、己を見間違えずにきっと見付けてくれる。

だってあのひとは帰ってくると言ったのだ。
それは、己がこの世に生じて一番最初の約束だったのだ。

そうやって帰りを待つ間に、気が付けばたくさんの人との約束が積み上がっていた。
また来年。
また来年。
きっと見に来よう。

果たされる約束と、果たされない約束。幾重にも積み重なって、そうしてとうとう古木と呼ばれるほど年輪が重なった頃。

自分が『何』なのか、ようやく気が付いた。]


神様になれば、何時までだって待ってられる。
此処から動くことは出来ないけど、いつか、が果たされなくても。待って、られるだろ?

[立ち枯れて逝く事よりも、永遠を、不変を選んだ。
高く高く積み重なった小さな約束が、己をそこまで押し上げたのだ。

伏せた目の奥で、揺れる面影。
もうその誰かのことなんて、ほとんど、顔も思い出せないのだけれど。

それでも、小さな約束で、無意識に、そんな意図も無く、己をを支えてくれた全ての人や、けものや、あやかしたちに、ずっと寄り添い咲いていたい。
その気持ちを、役目を、与えてくれた一番最初の約束を、いつか果たすことが出来るのなら────]

やっぱり、『おかえり』ってさ。
言いたいなあ。


【人】 町娘 小鈴

[ぽたぽたと、花が落ちる。

段々と白み始めた空に、もう夜明けが近いことを知った。
ほんと少しだけ墨を乗せたような、白い桜の花弁。
目の前にひらりと落ちたそれを、小鈴は手のひらでそうと掴まえた。]

……きれい。

[うすずみさま≠フ世話役を仰せつかって、三年。
いつも、この時だけは傍に寄ることを許して貰えない。
木の上に招かれていた者たちも今はそれぞれ地面に降ろされて、見上げた淡墨桜の、下から数えて四番目。一際太い枝に、見慣れた姿が手を広げて立っていた。]

(94) roki 2015/04/26(Sun) 01時頃

【人】 町娘 小鈴

[温い風が容赦なく花を浚って。
枝はもう、深夜の満開が嘘のよう。
その光景は、何度見ても胸の奥が騒ぐ。
いつだって、祭りの終わりはどこか、さみしい。

桜の花さえ咲かなければ、こんな気持ちにはならないんだろうか。
ふと思う。
すぐにそれを打ち消した。だって、この光景を見ないで終わる春なんて、信じたくない。

そうしている間にも、空は白々と明けて。
花祭りの夜が──終わりを、告げる。]

(95) roki 2015/04/26(Sun) 01時頃

【人】 町娘 小鈴

昔むかし。

とある領主の城の庭に、一本の桜の木が献上された。
大変色味の珍しいそれは、傷まぬように人手を多く雇って慎重に移植が行われたという。

さて、その雇われた者の中に、口を利かぬ庭師の男がいた。
彼は出自こそ不明だが、植物の扱いにとても長けていたため、桜を掘り返す際にも大層重宝されていた。

明日にはいよいよ植え替え、というある晩のこと。
件の庭師が、人目を忍んで桜を植える為に掘られた穴へと近付くと、こっそりとその底を一尺ほど掘り進めた。
そうして、柔らかくなった穴の底に抱えてきた箱を埋めると、土を被せて均し、そ知らぬふりで朝を待った。

植樹は無事に終わり、その腕を買われた庭師は仕事を与えられ、ついにはその地に住まうようになる。やがて時が経ち、世代が代わり、庭師の家系はいつしか樹医へと家業を変えていった。

(100) roki 2015/04/26(Sun) 01時頃

【人】 町娘 小鈴

庭師の男は、家庭を持ってもたいそう無口でほとんど口を利かなかったため、桜の木の下に埋められた箱がなんだったのか、知る者はいない。

彼がかつて、世相に流され、ついには故郷に帰れず逝ったとある歌人の付き人であったことも。かつての主が死の間際に、遺骨をある場所に埋めて欲しいと頼んだことも。
箱の上に植えられた桜が、のちに伊那の淡墨桜と呼ばれることも。


誰ひとり、神様ですら知ることの無い、*真実である。*

(101) roki 2015/04/26(Sun) 01時頃

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