24 明日の夜明け
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―― 伝説の樹 ――
[薄闇の中、ぼうと鮮やかに浮かび上がる桜の樹。 それは、はるけき彼方に打たれた楔。 その根元、ぼうと立ち尽くす銀の影が一つ]
[それは奇妙に背の高い、男のような、女のような影。 銀の髪が足元までするりと落ち、その表情を隠す。 身にまとうは、漆黒の見慣れない衣服。 明るい色など何も持っていないのに、桜と同じくどんな暗闇の中でもぼうと浮かび上がって見えるだろう]
……力が、足りぬ
[守護神とも呼ばれるそれは、ぽつりと呟いた。 咳き込む。髪は、いつの間にか半ばほどまで灰色になっていた]
(@0) 2010/08/02(Mon) 07時半頃
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[銀の人影は、そっと桜の幹に手を当てた。 みるみるうちにその影が薄くなって……
半透明の分身が、いくつもいくつもその身からはがれおちた]
[分身たちの姿は、あなたの目にも見えるだろう。 これまでかたくなに隠されていたその姿。 今は、頓着せずに曝される]
[半透明の分身たちは迷うことのない、物理法則にとらわれることない足取りであなたたちの前に現れる。あなたたちが一人だろうと、複数だろうと、それは同じ]
[3人以外にとってはその姿を目にするのははじめてだ]
(@1) 2010/08/02(Mon) 07時半頃
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―― あなたの目の前 ――
[皆の視線を受け止めると、分身たちは口を開く。 それは、対話ではない。 どちらかといえば、分身の口を借りた一方的な放送。 ただ、髪の奥を覗き込む人がいるなら、その目に悲しげな色が浮かんでいることを見てとる事ができるだろう]
……ここは、お前達の場所ではない。
『ここは、生と死の狭間の世界。お前達は、生の世界よりはじき出された』
[分身の口から、この世ならざる声が出る。 あなた達の中で、この銀の人影と以前出あったことのある人物は、その声とサラウンドに、音にならない声を聞くだろう]
[つまり、『 』の中は、赤陣営にしか聞こえません。 聞こえるというか、以前出会って、願いをかなえてもらったときに飲んだ「契約」の水が、銀の男の心持ちをダイレクトに響かせてくる感じです]
(@2) 2010/08/02(Mon) 07時半頃
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お前達は、本来、ここにいてはいけない。 だから、お前達を狙って「敵」が来る。
『空虚な悪意が襲い来た。 それがお前達を生の世界、命の世界からはじき出したのだ。 お前達を死の世界に引き渡さないためには、こうするしかなかった』
[銀の分身たちは、図上か、窓の外か、青白い月を指差した]
あの月が青から赤に変わるとき。 それは、「敵」が襲い来る時だ。
『「敵」は、世界の理。 情のない、ただ淡々と論理に従い動く機構の僕。 それは、生の世界から弾き出されたお前達が本来行くべき場所、死の世界に引きずりこもうとするだろう』
(@3) 2010/08/02(Mon) 08時頃
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―― 「敵」につかまってはいけない。 戻って来られなくなってしまう。
『―― 「敵」に見つかってはいけない。 口に真実を乗せてはいけない。 言霊は強大で、「敵」にすぐに感づかれてしまう』
逃げよ。 あの月が赤くなったなら、この箱庭の中、必死で逃げよ。 決して「敵」に捕まってはいけない。 「敵」に私の力は及ばない。
『私には、「敵」の目を少しの間欺くことしかできない』
(@4) 2010/08/02(Mon) 08時頃
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[銀の分身は、白く浮かび上がる樹を、その天辺を示した]
元の、あの光り輝く太陽の世界に戻りたいのなら、あの樹に「命の実」が生るまで逃げ延びよ。お前達ならば「命の実」の熟し加減は見れば分かるだろう。お前達が一人でも多く、少しでも長く逃げ延びれば逃げ延びるほど、「命の実」は早く熟す。
『ただ、「命の実」が熟しきるまでには時間がかかる。 それまで、私は「敵」の目を欺ききれないかもしれない』
だから、お前達はそれまで「敵」につかまってはいけない。逃げて、逃げて、お前達自身と「命の実」を守らねばいけない。
『だから、お前達に私の力をやろう。 お前達だけにしか、託せない。 真実を知るものが多ければ多いほど、「敵」に感づかれやすくなる』
[銀の分身たちは、あなたたちを瞳の奥の光で射る]
(@5) 2010/08/02(Mon) 08時頃
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『もし赤い月が襲い来たならば、逃げ延びよ。 「敵」が諦め、引き上げるちょうどその時、世界の境が揺らぐ。その瞬間だけ、お前はお前以外の人物を「生の世界」に押し戻すことが出来る。ただし、全員ではない。1度のチャンスに、たった1人』
『お前達は私と契約を結んだ。私と同じものを体に入れた。 お前の胸に聞けば、やり方全てを知っているはずだ』
[銀の人影は、輪郭からぼんやりぼんやり消えていく]
幸運を、祈る。
『幸運を、祈る』
[最後には、ぼんやりとした声が耳に、体に残るだけ**]
(@6) 2010/08/02(Mon) 08時頃
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