270 食人村忌譚
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かあ、ちゃ……ん。
(*0) pannda 2017/12/04(Mon) 22時頃
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[生温い風に四つ足は目を覚ます。 本来なら雪解けもまだ先、鼻先を掠めるのは 生木を凍らせる張り詰めた大気。
だが今、四つ足の鼻を湿らせるのは温度を持った風。 命の気配を湛えているくせに、ぼたぼたと零していく。
にぃ、と嗤った四つ足の口は深く裂けて、 赤い舌が鋭い牙を研ぎ直すように舐め拭いた]
(*1) pannda 2017/12/06(Wed) 22時頃
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グルルルル……。
[低い唸り声が喉の奥から漏れる。 前後に動く耳は片方しかないが、四方から聴こえる音を 逃すことは無い。
匂いと音を頼りに四つ足は雪に足を沈めながら 慎重に進めていく。
後ろから付いてくる仲間たちも真似ながら進む先に。 遠く遠くに雪に埋もれてある動物が 群れて住まう場所があった。
普段余程腹を空かせない限り、獣は近付かない場所]
(*2) pannda 2017/12/06(Wed) 22時頃
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[だが離れて動くドングリの様な影が見えて。
四つ足たちは動きを止めた。 そうして風下になるようにゆっくりゆっくり位置を変え、 雪の溜まり場に身を潜め。
茶褐色の毛並みの四つ足が距離を詰める。
どうしてその動物達がここにいるのか。 四つ足には関係なかった。
ただ、腹の膨らんだ柔らかそうな肉の匂いを 運ぶ動物たちに目をぎらつかせ。
道標のように赤い筋を付けた雪の上を、 一拍置いて一気に駆け抜けた]
(*3) pannda 2017/12/06(Wed) 22時頃
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ガルルルルッッッ!!
[この動物たちは群れになっても牙はなく、 時として火を噴く道具を使うのは知っていた。 だからまずその群れの首領を狙い、顔を潰す。
たちまち統制を失った動物の群れなど 後は好きに食い殺すだけだ。
これだけあれば暫く群れは生き抜いていくだろう。
早速柔らかで栄養満点な 腹の中身から食らい付いて気付く。
この血も肉も、この動物独特のものか。 何処かで口にした覚えがあった]
(*4) pannda 2017/12/06(Wed) 22時頃
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[何処でだったか。
牙を深紅に染めた獣は少し悩むような素振りを見せたが、 すぐに邪魔が入らぬうちにと、ガツガツと 食い進める。
何一つ変わっていない。
獣が家畜を食い殺しては生きる話**]
(*5) pannda 2017/12/06(Wed) 22時頃
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[崩れ落ちた、短い刀の刺さった身体 最期の鳴き声に触れて、ススムは眼を閉じる。
望みは叶わなかった。 人として生きる事 獣のように、喰って交わり死ぬだけの一生ではなく 誰ぞの役に立てる事、知識を追いかける事 身体だけでなく、情のある交わりを持つ事
どれ一つ成し遂げぬまま 意識が薄れていく]
(*6) Ayame 2017/12/07(Thu) 00時半頃
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――――僕も、誰かと
(*7) Ayame 2017/12/07(Thu) 00時半頃
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[その後、何年経っても
ススムのような青年が 村に生まれる事は無かった**]
(*8) Ayame 2017/12/07(Thu) 00時半頃
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