124 Acta est fabula.
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[腹の足しにならぬ。 獣の仔は男の中で唸る。
溢れる血潮と新鮮な肉を。 獣の仔は男の中で渇望する]
(*0) 2013/06/06(Thu) 01時頃
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[いくら茶を飲んでも渇きは癒されず。 いくら飲食しても腹は満たされない。
人は満足しても、獣は不満を募らせた。
危うい均衡が崩れる時は、近い───**]
(*1) 2013/06/06(Thu) 01時頃
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[男は何故自分が裸で横になっていたのかが解らなかった。 昨夜は確か、着替えるもままならず睡魔に襲われ眠りについたはず。 不可解な現象に首を傾げながらも、思い起こすのは昨夜見た夢。 妙に現実味を帯びた夢だった。
目の前に広がった紅い海。 その中に斃れる一人の男性。 獣の傷跡。
それらは何度も見てきた光景ではあった。 否応なく見てきた光景だった。
こびり付いた記憶は安寧を許さないとでも言うのか。 あまりの気分の悪さに、男は無意識に深く溜息をつく]
(*2) 2013/06/06(Thu) 18時頃
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[男はこの光景を見たことがあった。 数日前の記憶などではない。 つい最近───そう、昨日だ]
─── あれは ベネットだったのか?
俺が見た あの 夢は
[現実味を帯びた夢。
否、夢と思っていたそれは、現実]
(*3) 2013/06/06(Thu) 20時半頃
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─ 昨夜 ─
[男《獣》は夜半に目覚めた。 自由に動く身体。 箍が、本能が、限界を迎えていた]
オォーーーーーン ────………
[高らかな遠吠えは夜半に強まった雨音に紛れ、他へは届かない。 遠吠えが掻き消えると、身体がじわりと変化し始めた。
皮膚は数多の獣毛に覆われ、口端は引き裂け、頭部には二つの突起が現れ始める。 身体が縮み、着ていた服の中にすっぽり隠れてしまうと、その中から毛もくじゃらな物体が這い出てきた。 元の体躯に似合わず、仔と言っていい大きさの、ダークブロンドの毛並みの狼。 すの姿に不満を覚えたか、男《獣》は身震いをしてもう一つの姿へと転じた。 人と狼、両方の形を持つ姿に]
(*4) 2013/06/06(Thu) 20時半頃
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[物音を立てても雨音で消される悪天候の中。 男《獣》は廊下に出て贄(エ)を求めた。 渇きと空腹が極限へと達し、もはや我慢の限界で。 贄(エ)を物色する時間も惜しみ、手当たり次第に襲おうとするほどであった。
その矛先となったのは、ミルフィの幼馴染であるベネット。
襲うのは誰でも良かった。 渇きと空腹が満たされればそれで良かった。 目覚めたての仔は、返り討ちになるリスクも省みず、ベネットの部屋へと押し入った]
(*5) 2013/06/06(Thu) 20時半頃
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[獣の本能とは良く出来たものである。 贄(エ)が声を上げられぬよう、真っ先に牙で喉を喰い千切った。 口の中に広がる血肉の味。 周囲へと撒き散らされる濃厚な香。 待ち望んだものを一気に飲み込むと、唇だけで喘ぐベネットを床へと引き摺り倒し、骨に覆われていない腹部目掛けて顎門を大きく開いた。
グチャ ピチャ ゴリッ
柔肌を牙で引き裂き、腑を啜り、勢い余って骨を噛み砕き。 心行くまでベネットの血肉を貪った。 男《獣》は満足すると紅い海に斃れるベネットから離れ、仔狼の姿で毛並みについた紅を舐め取り始める。 夜中に廊下を通る者は居らず、その光景を見るものは居ない。 紅で寝ていた毛並みを立たせると、四足で立ち上がり事切れているベネットを見詰めた。
シ《死》を齎すシ《紫》の瞳。 普段は前髪に隠れているその瞳で贄(エ)となった者を一瞥した後、仔狼は半人半狼の姿へと転じ、発見が遅れるよう部屋の扉を閉めた。 そうして開け放したままだった自分の客室へと戻り、扉を閉めてベッドに身を投げ出す。 うつ伏せに転がる獣の身体は、眠りに落ちるうちに人のものへと戻って行った*]
(*6) 2013/06/06(Thu) 20時半頃
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おれが ベネット を ────
そんな 馬鹿な
俺が 人 狼 …… 師匠と 同じ ───
おれが 俺が おれ が
(*7) 2013/06/06(Thu) 20時半頃
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Mein Gott!!(何てことだ!!)
(*8) 2013/06/06(Thu) 20時半頃
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[男《人》は自分《獣》を知り、嘆きの声を上げた。 人狼として覚醒した理由は知らず、ただ血肉を求める存在であることを認識し。
目の前で為される会話に恐々とする。
追う側から追われる側へ。 再び訪れた死への恐怖に、シ《紫》の瞳が収縮した]
(*9) 2013/06/06(Thu) 20時半頃
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──── 殺さないと
人を 殺して 殺して
いきるために 殺して 喰らって
今までと同じように 殺して ころ して
(*10) 2013/06/06(Thu) 21時頃
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[人の思考と獣の思考が入り交じる。 追われる側に立つ恐怖は複雑な思考を行うのを拒否して。 全てを喰らい障害を取り除こうと、男は単純な思考に支配された]
(*11) 2013/06/06(Thu) 21時頃
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殺して ころして コロシテ
雨が止むまで 生き延びて
ここから逃げ出せば きっと
(*12) 2013/06/06(Thu) 23時頃
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[生きるためにはそれしか方法が無い。 人として人を殺して、獣として人を殺して。 それを繰り返して行けば、生き残れる。 男を害そうとする者が居なくなれば、きっと道は開ける]
(*13) 2013/06/06(Thu) 23時頃
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