259 ―シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア―
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オーレリア。居るか。
[軽いノックに引き続いて声を掛けた後の沈黙。再度声を掛けての不在かと身を翻す前、扉にそっと触れれば、血の凍る己の手よりも冷たい扉の向こう、濃く深い闇の気配がする。まるで今にも扉の隙間から溢れんような。
ああこの静寂は。この身の内深くに沈むような闇を、深淵を、眠りを私は知っている。 そうして先程のイルマの様子と比せれば、恐らくこの部屋の主の「眠り」を肌で感じる事が出来た。この女には珍しく、呑み込まれるのを恐れるようにそっと扉から手を離した。]
主もそろそろいい歳か。 別れの言葉くらい告げてやればよかろうものを。
[さて。己の時は如何ばかりであったろうか。あの猫めには珍しく、ぐずりを見せたかもしれない。
長の眠りが何故起こるであるのかは知れない。不老不死の吸血鬼であれど、その躰は人と同様、少しづつ草臥れていくのか。例外もあろうが、長く齢を重ねる吸血鬼程、その眠りを必要とする者が多く思えた。]
(328) 2016/12/03(Sat) 02時頃
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私の時は猫であったが、主は犬か。目覚めた時は覚悟しているがよいぞ。
[夢の合間の現とて、無聊の慰めとした訳ではない。目覚めてある時、全霊で全てを謳歌するのが女の流儀だ。であるからこそ、眠りに就いた虚ろな躰の傍に縛り付けるなど思いもよらぬ。それでは余りに寝付きが悪い。勿論、去りてある者にそうして未練は持たぬ。
だが再び2人の女吸血鬼が見える日の様子を肴に、酒を煽る事くらいは許されよう。最も、その日までイルマが罷り間違って陽の元に落ちねば、の話だが。
1800年を行きた女吸血鬼に敬意を評す様に、カーテシーにて礼を施すと、くるり、その裾を翻した。]**
(329) 2016/12/03(Sat) 02時頃
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