数百年の刻(とき)を経て、ヒトが変わったように、我らもまた変わった。
我らの数は激減した。
その数少ない同胞は大陸中に散り散りとなり、中には海を渡っていった者もいる。
戦火はヒトも我らも関係なく、根こそぎ蹂躙していく。
同属同士の婚姻で生される仔は減り、生み出されるのはヒトの血を引いた者ばかり。
我らはもう、祭祀の周期ごとに儀式に送り出せる人数を確保できない。
そして、この村で信仰が惰性となり、敬神が単なる習慣に変わったのと同じように。
我らもまたヒトの間で暮らし続けるうちに、我らの神である森に対しての尊崇を喪っていったのだ。
彼らが口減らしのために、罪人や厄介者を生贄として送り込んでくるようになったのと同じく、我らが儀式に送り出す巡礼もまた、罪を犯した者や群れに居場所の無いはぐれ者に変わっていった。
――そう、我らとヒトに何も違いもない。
(*12) 2010/08/07(Sat) 16時頃