―王の通達のあった後、大臣室にて―
[>>@72通常業務を滞りなく進めていた男の手が、至急連絡にぴたりと止まる]
国民へ、通達……?
[どこか上の空で、連絡を繰返し
やがて、のろのろと他に書類を回すように言った。
全体の業務を浅くやっている自分より、専門のほうに回したほうがいいはずだ。
いつもよりずっと遅い判断力でそう思う。
それにしても、今日はやけに頭が霞がかっている。
中身がなくなったように、軽い。
記憶を消され、何があったかは覚えていないが、その爪痕は確かに男を蝕んでいた。
数日もしないうちに、男の自我は壊れ崩壊していく運命にあることを、まだ誰も知らない。
政治事態への影響は、王が存命な限りさほどないだろうが、それでも動乱を目の前にして大臣が一人変わることは、それなりのダメージであることだろう。
その時が来る原因も忘れたまま、彼は習慣に従い、新たな書類を片付け始めた]
(358) 2013/02/17(Sun) 22時半頃