な、待っ……泣かないでくださいよ、
[子供に泣かれる事は少なくない。だから、意地でも小児科担当にだけはなるものかと。過去の自分の無駄な意地を思い出しながら、声を上げて泣く少女に、おろおろと視線を彷徨わせる。
血の繋がった弟だって手に負えないというのに、どうして彼女を落ち着かせることができようか。]
…し、死んでしまったら、ええと。
青い鳥…?も、見られなくなります、し。…その。
[弟の口から聞いたものと同じその言葉に、どこか胸の奥が痛むような錯覚を覚えながら、なんとか泣き止ませようと、途切れ途切れの言葉を繋げた。
せめて少しでも楽になれば良いと、まだ使われることの少ない空調を入れて、忘れずに保湿機も立ち上げて。
いっそ麻酔でも打ってやりたいと、そんな投げやり過ぎる思考は何とか押し留める。]
大丈夫ですから、……少しだけ、我慢してください。
[彼女の言う"あおいとり"とやらが何かすら、自分は理解していないのだけれど。
こんな時、もうひとりの同僚や、立ち去った作家の青年ならば、どんな言葉を掛けるのか。全く見当がつかない。
ベッドの横に膝をついて、無駄に情けなく震えるだけの、薄っぺらい言葉を掛け続けた。]
(323) 2014/06/23(Mon) 23時半頃