[廊下の向こうから聞こえた自分を呼ぶ声>>307に、それがつい先ほど中庭で会った男性だと知れば、露骨に眉を顰める。
けれどその腕に抱かれた少女>>304と、彼の切羽詰まった声に気付けば、怪訝そうに細められていた瞳はすぐに丸められた。]
何が……、いいえ。
こちらへ。ゆっくりで、大丈夫ですから。
[何があったか、なんて。そんな問いは無意味だろう。
だから言ったではないかと、そんな小言を言うのは後に回して、常とは違うネルの表情にひとつ頷いて。
踵を返して歩いてきたばかりの通路を戻りながら、彼の歩みを助けるように、少女に繋がれた点滴台を引きながら誘導する。
灯りを落としたばかりの診察室を再び蛍光灯で照らせば、備え付けの処置台に少女を寝かせるよう、目で合図をして。]
すぐに戻りますから、……ついていてあげてください。
[一言声を掛けると、彼の動作を見届けることなく、診察室の奥へと向かった。]
(311) 2014/06/23(Mon) 21時半頃