――階段踊り場→診察室――
[人気のない階段を降りて、そのまま診察室へと向かおうとして、背後から聞こえた何かを叩きつけるような音>>280に、一度足を止めかける。
今更戻っても拗れるだけだと、結局はゆるく首を振ってから歩を進めた。――次に弟に会った時には、怪我がないか確認しなければ。]
………、まったく。
[無人の診察室で掲示板を確認しながら、他と僅かに浮いた自体で書き直された項目に目を止めて、小さく嘆息した。
院長の人柄や実力は尊敬に値する。けれど、こういう所はいただけない。
――先の弟とのやり取りを思い返せば、この事に関して口を挟む余地は無いのだけれど。
割り振られた項目を目で追いながら、憂鬱さに目を伏せてこめかみを抑えた。
ガーディほど露骨ではなくとも、回診を良く思わない患者は多いだろう。
事実、明確な治療法が見つかっていない病の回診は、何の意味もないと言ってしまえば、それまでなのかも知れない。それは自分も理解しているけれど。
バインダーに挟んだカルテを取り上げると、薄暗い診察室を一度振り向いてから、再び廊下へと歩み出た。]
(294) 2014/06/23(Mon) 17時頃