巡礼……貴方が好む言い方でなら生贄の行列は、古くは村の中だけではなく、森へ分け入って夜明け近くに村に戻るもので、祭りの中核を成す行事でした。
森の中では、巡礼は一定の規則の下になら、お互いに殺しあうことを許されていました。
村内の犯罪者は巡礼への参加を強制されましたし、逆にそういった参加者に遺恨を持つ者が、巡礼に参加して報復を試みることもありました。
昔は、巡礼がそうして森の中で死んでも、遺骸は発見されないものとされておりました。巡礼は「帰らない」のであって、通常の意味で「死んだ」とは見なされず、村の墓には葬られません。巡礼として死ぬことを「森へ還る」とも言いました。
そのようにして、殺害者を社会的に犯罪者としない特別な環境が作られたのです。
アルフレッドの推測では、古代ドルイドの自己犠牲の儀式と同じように、絞殺した後樹木に吊るしたまま風化させたり、沼に沈めるなどして、遺骸を隠蔽したようです。
巡礼は、参加者が死ぬ限り、つまり村に帰ってくる人数が減る間は終わらずに、毎晩続けて行われました。
そして……。
そういった「帰らない巡礼」とは異なる死者が出る年があった、と言われています。
(292) 2010/08/01(Sun) 02時頃