[インクの散らばった机と床を必死に吹き上げて、ぺたりとその場に座り込む。
一瓶丸々落としたものだから、あちこちに飛び散って大変だった。しかも部屋だけでなく、ディーンの体自体にも、だ]
ああもう、何だってこんな事に……。
[半ば泣き出しそうな声で呟く。大失態だ。こんな所、誰にも見せられない。
肌についた分は、後でシャワーでも浴びれば良いとして。真っ黒になったシャツはどうしようか。そんな事を考えていて、ふと思い出す。
――シャツもスーツも、予備の物はクリーニングから返っていない。服をどうしようも何も、替えが無いという事だ。
本来なら配布されている筈の病衣も、着ないだろうからと随分前に捨ててしまった。どうして残しておかなかったのか。過去の自分を責めても、今更遅く。
……で、あれば。誰かに借りるしか、手は無いだろう。
誰か自分と丈の会う奴は居ただろうかと考えて、一人、心当たりを思い出した。まあ、彼が貸してくれるかは分からないが]
(269) 2014/06/23(Mon) 10時頃