―孤児院近くの路地裏→―
[痺れの継続する左腕を疎むよう、下げたまま走って路地裏を抜けた。
人気のないことを確認して一度立ち止まる。男は確かめるように左手を上げた。
開いて閉じる。それだけの動作に異様に時間が掛かるうえ、震えながらで感覚も覚束ない。
それを明らかにして、男は壁に寄りかかった。]
自分ので毒されてたら、どうしようもないな。
[滲む赤も黄緑も、舐めてしまえば少しはマシかと口を開く。
傷に触れる舌が触れる瞬間、痛みに思わず舌を引いたが
最初の衝撃を乗り切ってしまえば眉を顰めたまま粘着質の液体を舐めとった。
この毒を受けた相手も、似たような症状になっているのだろうか。
少なくとも暫く動けなければいい。あの力強さと――いつのまにか持っていた自分と似た爪。
あの継ぎ接ぎがそうとう厄介なことは理解した。出来れば他の化け物と戦って負傷する前に倒せればいいのだが。]
(255) 2011/10/21(Fri) 00時半頃