―― かつて、星のない街角にて ――
[きらきらと、地上にばかり灯りのばら撒かれた町は、生まれ育った小さな港町とは、何もかもが違って見えて。
狭い世界で育まれた関係なんて、この華やかな光の洪水に紛れて消えてしまうのかもしれないな、と思っていた。
けれど、彼は変わらず。
むしろ、そんな町の中だからこそ、ほっと一息つかせてくれるような、やさしく暖かな灯りのまま。
場所は違えど、彼が居るだけで、自然と和やかなひとの輪が出来。
その傍らに居させて貰えるのが、ただ楽しくて、幸せだったあの頃]
きれいだけど、なんだか…… 勿体無いピアノだね。
[彼は、隠れ家的なお店を見つけるのが上手かった。
お酒をそれだけ愛していたからだろうか。
その日入ったのは、ちいさなbar。
ひとりだったら、きっと見落として通り過ぎていただろう通りに、ひっそりと佇んでいた店構え。
薄いカクテルをくちにしながら、呟いた自分に。
彼は、ピアノをか、その弾き手をか。見つめていた視線を向けると、柔く笑んだのだった*]
(209) 2011/04/10(Sun) 20時頃