……そら。が、綺麗だった。
きみの色のように、黒くて――でも、優しいんだ。 どこか遠くから、輝くかけらがぱらぱらと降ってくる。 雨みたいに。
僕の頭上を流れて、 水面に落ちてきた月に、―――
” うみ ”で唄う、鳥の声も。 僕は、
[ ―――ああ、僕は何を言っているんだろう。
彼の瞳、先に覗けた彼の髪。 しんかいのそら。真黒な宙 。紅く染まる空 。 早い頃、黒が退くそら 。僕はそこが好きだった 。 森が、葉っぱがそよそよと囁く。 ” 造りものじゃない ” 花が、僕に話し掛ける 。
かつん、――と。 いつの間にか彼の黒に手を伸ばしていた指先が、レンズに弾かれた 。……レンズ? いやもしかしたら、彼にはたき落とされることもあったかもしれない。
僕は手を戻して、ぼうと篭った脳みその熱を振り切るように、首を振った 。 ―――もう、 ” 見 ”れないと諦めた、 ……とおい、記憶だった。僕の昔の、―――記憶 。 ]
(206) 2015/07/13(Mon) 22時半頃