ーー少し前ーー
[>>174部屋から離れる際、背中をそっと撫でられる感じがして、それが甚六だと直ぐに分かった。大丈夫と言われている気がしたからだ。笑みがこぼれた。女は少しだけ振り返り、軽く頭を下げた。
女は二人の声が聞こえない位離れた。何を話しているかはわからないが、多分、祟り神に関係がある。今、天界はその話題で埋め尽くされている。世事にあまり興味のない自分でも、痛い程感じている。そう思いながら、手首を布ごとぎゅっと握り締めた
きっと皆、自ら考え、行動している。自分がしている事といえば、反物を織っているだけだ。こんな非力な自分出来ることは何だ。考えても考えても、機織りだけだった。
その上、この得体の知らない鱗だ。また考える。誰かに相談すべきか。誰に?甚六に?こんな姿を見て彼は何を思うだろうか。恐ろしいと、気持ち悪いと、蔑んだ目で見られるのだろうか。そんな人でないと思いたいが、彼を思う程不安になるのだ。
こんな事態に、自分の事ばかり。女は余計に気を塞いでいく]
(185) 2013/08/13(Tue) 23時半頃