――処置室――
[背に負った身体をなるべく揺らさないように、時間をかけて処置室へと辿り着く。
不安定ながら支えていた身体をベッドへ移してやってから、棚を開いて処置の準備を始めた。]
……、デラルさん。
[この場所から離れていった、少年の姿をした男性が、ふと思い浮かぶ。
常よりも慌ただしく思える院内の混乱は、まるで彼の退院が引き起こしたような。そんな錯覚を覚えて、小さく首を振った。
――いつまでも同じままでいられないことは理解っている。
当事者の彼らには及ばなくとも、自分だって弟という奇病患者をずっと見てきた。
訪れ始めているその"変化"が、どうかカリュクスと同じように、良い変化であるようにと。
ぼんやりと思考を移らせながら、点滴台を引いてベッドの近くへと戻る。]
……次は抗めまい薬も出しましょうか。
近いうちに検査もしましょう。
[彼女の了承を得られたならば、今後の方針を考えつつ言葉に乗せながら、処置に取り掛かるだろう。]
(175) 2014/06/26(Thu) 15時頃