…何を言ってるんですか、まったく。
歩けますか――いえ、無理そうですね。
["生きていて良かった"だなんて、縁起でもない言葉>>169に思わず嘆息する。掴まれた指を一瞥して、支えるようにその手を掬い上げて。
彼女の口から症状を聞くことはできなかったけれど、それも当然だと思い直した。]
(見たところ目眩に思えるけれど――原因は何だ、貧血か、いや、神経炎か、自律神経か、)
……すみません、失礼します。
[自立もままならない様子に、素早く思考を巡らせて、何にせよまずは身体を休ませるべきだと。
ひとこと声を掛けてから、特に反論が無ければその身体を背に負うだろう。
先からか細い声で繰り返される彼女の言葉を思えば、もしかしたら望まれていたのは、別のかたちだったかもしれないけれど。]
………、
[ふわふわとした語感のその単語に、けれど治療にと急く今、たとえば呆れるだとか、照れるだとか、そんな感情の優先度は低い。
常に華やかな彼女の言うような理想の存在には、きっとなることはできないかもしれないと。居た堪れなさを誤魔化すように、首に回された手を薄く握った。]
(173) 2014/06/26(Thu) 15時頃