…たべたら、ダメ?
[ 心底から疑問というように。“きみもいっしょなら、”わかるだろ、と尾の先に触れかかる。
留め具の緩んだ面体がずり、と動いた。この前も「くつわ」を壊し剥がして、ひとにかみついてしまったのだったか。
――しかられる。あのときは弱いところを捻られて、怯んで。“マトモ”にさせられて、
今度しかられたら処分されるだろうか、とパーカーのフードをぱさりと下ろす。空腹はあまいにおいを閉ざしていく。手袋を外しつつ、短く、目と同じに黒いひとの髪を掻き分けて、マスクのベルトを弄った。]
…、はずしてくれる?
[ 手間取れば、面体の下で人と同じに、幼く困ったような顔で問いかける。
過敏すぎる意識は音や作業に散りやすく、管理者であるなら連絡端末の類いは持っていたかもしれないし、使う隙すらあったかもしれない。
――また外されなかったとして、暫くして自分で外し壊せば。まずは、と鋭利な歯先で衣服を噛み剥がし、一息に胴体へかみつこうと。マスクを取り去り、ひとと似た――それでも獣の特徴として、“弱点”の鼻先を無防備に晒したまま。]
(166) 2015/07/11(Sat) 13時半頃