[部屋から出て行ってしまった風船。
てん。てん。てん。という軽い音とその赤を、名残惜しげにしばらく目で追いかけていたが。]
(ワンワンのせんせーにおこられるかも。)
[風船だけじゃなく、紙飛行機も飛ばしてしまったのだ。
もしも気難しそうな茶色の髪の医師や、院長先生に見つかったら怒られかねない。
勇気付けるようにぺちぺちと、自分の頬っぺたを軽く叩くと立ち上がる。]
あさがおのふうせん。まってー。
[パタパタと足音を立て、歩数すら数えずに風船を追いかける。
大きくなった人に、踏み潰されるかもしれない。という恐怖はいつの間にか何処かへ行ってしまって、まっしぐらに風船だけを目指す。
赤い風船は、追いかけっこを楽しむように朝顔の数歩先を転がって行く。
風船だけを見つめているので。もし今、目の前に誰かがきてもすぐに気づくことは難しいだろう。]
(153) 2014/06/26(Thu) 09時頃