[お世辞交じりの言葉に、そうでもないの。と答えながら、A4サイズを収めるファイルが入る余裕のある鞄の口を開く。中には青いファイルが行儀よく並んでいた。]
親しんでもらえるならうれしいのだけど……だいたいは避けられちゃうの。ああして街に立ってるとね、逆に警戒されちゃうみたいで。警戒心をもつっていうか──怖がることって、とてもいいことだと思ってはいるんだけど、声をかけてくれるような人は本当にごく稀になっちゃうの、半分くらいはしかたないってわかってるんだけど、やっぱりちょっと残念な部分もあって。ああして意見を聞くことでわたし達にもできそうなことを探してるんだけれどなかなか…… ああ
[間をつなぐように喋る言葉の途中で、ファイルの中から一枚の紙を引っぱりだした。青年の手元に、薄っぺらい紙が差しだされる。]
ご協力お願いできるかしら?
[笑みを含んだ声とともに軽く首が傾げられた。紙の表面には、意図の読みにくい一項目だけの質問がたわんだ紙の曲面に印字されている。]
(144) 2016/09/28(Wed) 05時頃