トニーが。…そうですか。あの子も大きくなりましたからね…、支度だけは不自由のないように、してあげないと。
[トニーが旅に出る。その話をカルヴィンから聞くと、驚いて目を丸くした。
山間のこの村からは、隣の村へ行くにも決して楽な道行きではない。成長しているとはいえまだ子供である少年を思い浮かべ。チャールズは思案顔で、しかしどこか嬉しそうにそうですか、とまた呟いた。
こちらの提案に顔を真っ赤にして抗議するカルヴィンに、ああ、すみません、と笑って応じる。
年頃の少年に抱っこは不味かったろうか。彼が自分よりも長い時を生きている事は承知しているが、チャールズの態度は一貫して子供に接するそれだ。
おんぶをせがまれると、はいはい、と彼の前に屈んで背負ってやる。──仕方の無い子ですねえ。親戚の子供を甘やかすような口調で言った言葉は、カルヴィンにどう響いたろうか。背中に居るその表情を見る事は出来ないけれど。
少しずつ傾く陽の中、少年の住処へと歩き出す。雪の道の上に二人の影が伸びて落ちていた。]
(132) 2013/11/21(Thu) 23時頃