[観察するのを止めろと、先程きちんと言っておくべきだった。視線は嫌いだ。息が詰まって、気持ち悪くなる。
咄嗟に動かない表情を右手で覆う。二度三度と深呼吸をして、どうにか心を落ち着けた。
陽気な態度で此方を追い詰める相手に軽く苛立ちながら、それでもその場を離れないのはただ話を聞きたいからだろうか。我が事ながら理解出来ない。
……けれど”失う物がない同士”と。彼のその言葉は胸に引っかかって。飄々としているくせに、随分と絶望めいた言葉を使うじゃないか]
それなら……話は早いな。
[多少荒くなった呼吸の合間、どうにか言葉を紡いで。その居た堪れなさにそっと視線を外す。
ああもう。どうしてこの体はこうも思い通りにいかないのか!]
……私の部屋は……今は止めておいた方が良い。
お前の部屋で良いだろう。
[自室は先程インクを盛大に零したばかりで、きっと未だ匂いが残っているだろう。
ディーンはインクの匂いに慣れているし気に入ってもいるが、慣れない者にはキツいに違いない。よりにもよって自室でダウンされたら面倒だ。
彼が諾と答えるなら、案内しろと催促するだろう。まだ回復しきっていないなら、再び肩を貸す事も吝かではない]
(126) 2014/06/25(Wed) 23時半頃