[――先に少し嫌味な事を言ってはしまったものだから、もしかしたら返せと言われてはしまっただろうか。
例え言われたとしたところで、女に一度貰うたものを返すつもりなどありはしないけれど。]
……はぁ、やっぱり美味しいこと。
先生もおひとつ……、いらなさそうやね。
[そうしてもうひとつ星をつまみ一粒勧めてみようとはしたけれど。
何やら眉に皺を寄せている薬師を見れば、小さな溜息と共にそのまま自分の口へと含み。
コロリコロリと口の中で砂糖の星を転がしながら、ふと店の入り口の扉へと目を向ける。]
――……ねぇ、先生。聞かはりました?
江戸城に、"鼠小僧"が入ったんですって。
町はその話で持ちきりみたいやよ。
[手にした瓦版をひらりと掲げ、薬師の前に差し出してみせ。
薬師もとうに耳にはしているかもしれないけれど、それならそれで手を引くだけだ。
続いて自分の元へと届いた一通の手紙を懐から取り出し。少し困ったような顔を作って、薬師の方へと視線を向ける。]
(100) 2015/01/21(Wed) 18時頃