[息が、詰まる。
湧き上ってくるのは、彼の言葉通りに攫ってしまいたいという欲。
しかしそれを溢れさせまいと待ったをかけるのは、他でもない『朧』だった。>>92
きっと、今、手を取り走りだしてしまったなら。
今以上に今まで以上に苦しい思いをさせてしまうかもしれない。
『俺』の我が儘だけで、そんな思いはさせたくは無い。絶対にだ。
しかし。しかし、このまま手を離せ別れてしまえば。藤之助が今以上にボロボロになってしまうのでは無いか。
今度こそ完全に『失って』しまうのではないか。
……這いあがってきたのは恐怖と、それから。]
いいのか藤之助。
……お前の、手をひいても。忘れなくても。
お前を好いているが故に、私欲の為に藤之助を貰い受けると聞いても尚。
お前はそれを望むのか?
[何かを誤魔化すかのように、藤之助の耳元で囁き朧の顔を覗けぬように隠してしまう。
あの晩以上に酷い顔をしているであろう表情を、見せないように。]
(99) オレット 2014/09/26(Fri) 01時頃