―― 夜:中庭 ――
[すっかり陽も暮れて暗くなった中庭に出る。ヤニクとホリーもそこにいるだろうか。
少女は備え付けの木のベンチに腰掛けると、大きく伸びをして空を仰いだ。]
はぁ、綺麗……
[目を細めて星の輝きに見入る。夏の夜空はどこか明るく忙しなく星が輝いて、見ているだけで楽しくなれる。ベガ・デネブ・アルタイルを指先で結ぶように線を引いて、大きな三角形を作った。
視線はゆっくりと南の空へ向き]
……南に見える赤い星は、一等星のアンタレス。
さそり座を見つける目印にもなりますね。
赤く大きなアンタレスはよくサソリの心臓に……
[すらすらと唇から零れる言葉にはっとして口を噤む。
天体観測は好きだけれど、星座の勉強はしたことがない。膝に乗せた水鉄砲が、ベルトから下がる星型のミラーとぶつかって小さく音を立てる。]
………。
[押し黙ったまま、ぼんやりと赤い星を見ていた**]
(83) 2011/08/28(Sun) 14時半頃