[高く、鋭く、軽やかな音が響き渡り。
透明の檻が砕け散る。
その中から解放された、赤。水色。黄色。青。
様々な花弁が穏やかな風に舞い上げられ。
金網をすり抜けて。飛び越して。絡み取られて。鳥の様に飛んで行く。
中庭の方にもきっと花弁は舞い落ちて行っただろう。けれど彼等の行き先には、さほど、興味は無い。]
……卑怯、なのかな。
でも、ごめんなさい。
………もう、誰を傷つけたのかも覚えてないんだ。
[少し悲壮な顔をして。手提げの中のガラスの器も、落とし割る。黄緑。白。薄紫…同じ様に、消えて行く。
謝罪の先は、嘗て傷つけたかもしれない誰か。
割れたガラスが、巌の様な手の古傷を覆う花々を映し出す。
まるでひとごろしみたいな、歪んだ歯並びを映し出す。
一番大きなメスシリンダー。
濁った色の溜まったそれだけは、割らないまま。]
(83) 2014/09/10(Wed) 21時半頃