[こちらの言葉にも反応を示さず、何やら思案する青年>>81を、身を固くしたままじっと見る。
刃物を突き付けられるなんて、ここに来て初めて経験した。それから今後も、できるなら二度と遭遇などしたくない。どうか変な気を起こしてくれるなと、息を詰めて相手の様子を伺って。
――どうやらその願いは叶ったようだ。]
…毒味、ですか。
構いませんけれど…。
[離れていくナイフにようやく息を吐き出して、本当ならば取り上げてしまいたいけれど、おそらく不可能だろうと考え直す。
じっと睨まれて、思わず苦笑を返しながら。
自室に篭りがちな彼を共同スペースへと連れ出す、そんな目的は、とりあえずは達成できそうだ。
凶器を持った相手に後ろにつかれるのも、なかなかに居心地が悪いけれど、仕方がない。先立って廊下を歩き、階段を降りてゆく。]
食堂を利用されたことはおありですか。
……何がいいでしょうか、僕は軽く済ませたいと思っていますけれど。
[ぽつぽつと言葉を選びながら、背後の彼に声をかける。
そうしている内に食堂へとたどり着けば、一応は気を遣って、一番隅のテーブルを示すだろう。何にしますか、と。道中にも尋ねた言葉を繰り返しながら。]
(82) 2014/06/21(Sat) 11時半頃