おや、思ったより若そうだ。
[品定めか挨拶か。触れる腕には進んで手のひらを添えて、滲む雰囲気から思い描いていた姿とは裏腹な 未だ肌理の細かい肌に、小さく唸る。
返された忠告には薄く口角を上げて、まるで小言を聞き流すように首を振ってみせた。]
何でも、…か。
そんなら、あたしの方から盗っちまいたいぐらいだよ。
姐さんの目には今、どんな景色が映ってんだろね。
[言外に、“盗られる物など有りはしない” そう含めながら 利かぬ目をとんとんと指して、冗談目化して伝えれば。
話も切りが良いとばかりに、勧誘は終いだとばかりに。三味線を抱えて、着物の膝を直す。
彼女がそのまま食い下がってくれたのなら、多少は気を良くして、名前くらいは尋ねるつもりになっただろう。
そうでなければ、そそくさと逃げ出すだけ。
どちらにせよ、手に収め損ねた金の匂いは やはり少々、居心地が悪い。]
(74) 2015/01/18(Sun) 22時半頃