─教会・裏庭─
[アリスを伴って裏庭に出ると、歩くものの居ないそこは既に降り積もった雪で銀色に染め抜かれている。
歓声を上げて真っさらな雪の上に足跡を着ける少女に、自然と眦が下がる。
先を言っては足跡を見比べてみたり、ちいさな手で握った雪玉を此方へ放ってみせたり。
なんともまあ愛らしいはしゃぎっぷりに、チャールズは目を細めて後を追う。
ほら、気を付けて。時折足下の注意を促しながら、新雪を踏みしめて進む。そう広くはない裏庭は、そのまま墓地へと続いている。
やがて辿り着いたひとつの墓石の前で、彼女は恭しく御辞儀をして見せた。>>53
亡き母に語りかける声は、今は涙を含んではいない。以前ならば、いつ溢れてしまうのだろうと心配しただろうけれど。
冷たい石の上に積もった雪を、そうと払い落とす少女の背を、チャールズはただ、静かに見守っていた。]
(74) 2013/11/21(Thu) 01時頃