──教会・少し前──
[俺だって若くはねぇよ、もう。赤い髪の男が、先ほど何気無く落とした言葉を思い出し、チャールズは僅かに表情を曇らせる。
龍族の寿命やその魂の在り方は、個体や種族で様々であるという事は聞き及んでいる。
長さは違えど、人間同様に一度きりの生を全うする者。或いはその魂が燃え尽きるその時まで、転生を繰り返す者。自然物や現象の様に、ただこの世界に在り続ける者。
神話の世代から続く彼等は、等しく稀有な存在。実際、その在り方は、生き物よりも神に近い。
その思惑や意思を読み解く事など、人の身である己にはとても出来る事では無いけれど。]
──種火は、燃え盛る明かりにも、焼き尽くす業火にもなりましょう。だとしても、元を正せば同じ種火です。どれほど形が違っていても。
[少なくとも、その恩恵を受ける我々にとっては。
暖炉の中てぱちりと爆ぜる炎を見つめ、穏やかな声音で呟いた。淹れたての紅茶を、すいとドナルドの前に置く。]
──どうぞ、ごゆっくりなさって下さい。お出掛けになる時はカップは其の儘で結構ですから。
[言い置いて、傍のアリスの手を取り、庭から続くささやかな墓地へと向かった。]
(69) 2013/11/21(Thu) 00時半頃