[彼が足から逃れ様とするなら、今更引き止める事も無くそれを解くだろう。吐き捨てる様な呟きには小さく眉を上げて。すっかりと元気を無くしてしまった彼に、変わらず懐疑の視線を向ける。
とはいえ何にせよ、一応窮地は脱したのだろう。そう考えれば、ほうとため息を吐き出す。――けれど笑みを乗せた顔が再び近付いてくれば、ほんの少し目を見開いて、思わずその顔を見詰めた]
――本音?
[落とされた言葉に目を瞬いて。一体何が本音だというのか。ふとそんな事を考えるけれど。すぐにその言葉の真意に気付けば、眉を寄せて苦笑する。
嘘だろう、また詰まらない冗談だな。そう言おうとしたのだけれど。
啄む様に落とされた唇と、おどける様に傾いだ首に、もう数度瞬く。半ば呆然としたまま離れる体を見送れば、無意識の内に言葉を落としていた]
何だ。あんた、本当に私に惚れてるのか?
[まさか違うだろう、そんな声音でもって首を傾げた。
もし本当にそうだとして。これ以上の笑い話は無いと、そう思うのだけれど。妙に落ち着いてしまった相手の手前、嘲笑う事も出来ずにただただ不思議そうな視線を向ける]
(67) 製菓 2014/07/08(Tue) 00時半頃