…あ、うん、たぶん。
そんな感じ、です…
[朗らかな声で尋ねるフィリップにエルゴットはあからさまに目を泳がせる。>>57
嘘が、苦手なのだ。というより、人と接すること自体、エルゴットは不得手であった。
それでも今まで、なんとか隠れて小犬を飼ってこられたのは協力者のおかげであろう。
フィリップは寮のルームメイト、ジリヤの幼馴染である。
ジリヤの態度が彼にだけ、何処か他と違うことをエルゴットは知っている。
その"幼馴染"という絆を彼女は羨ましく思っていた。
眩しくて暖かくて、自分にはない、見ているのが辛い関係。
引退した美術部でも、後輩のシーシャには"腐れ縁"だと言う友達、ハルカやマドカが居て。
楽しげに談笑する様子を見かけては、その眩しさに居たたまれなくなって、その場から逃げていた。
エルゴットがシーシャの描く絵を好きなことも、おそらく彼は知らないだろう。
直接、傍で覗いたりはしなかったし、彼が居ない時、誰も居ない部室で独り、そっと眺めていただけだったのだから。
中庭に咲く綺麗な花達も、そう。
彼女はいつも、遠くから隠れて眺めるだけ。]
(60) 2014/03/03(Mon) 21時頃