あ。――…わっ、
[>>56 先程と同じように背中に掛けられる細い声。己が振り返るより先に聞こえる、犬の鳴き声。
足元に寄り付く大きな綿毛。そこにお目当てのものが無いと解ると、子犬は無言で自分を見上げていた。
褐色が、ボタンのようなくりくりとした目を捉える。]
エリーさん…、ぁ、その……――…む、迎えに、き、来ました。
[迎えに行く、とは素直に言い難かったけれど。他に表現が思いつかなかった。
間の悪い会話。互いに目を見合わせようとしない。子犬が空間を埋めるように、右へ左へと動いたか。
――…しかしながら、視界の端に映る、大きなキャンバス。
それだけでない。筆、絵具、クロッキーブック等々。
こんな夜にスケッチな、訳がない。]
――…ぇ、エリーさん…? あ、あの、何を……?
[ほんの少しだけ、声が硬質なものになる。]
(60) 2014/03/07(Fri) 20時頃