-滝の裏の洞窟-
[ねぐらにしていいる洞窟へと戻ってきたパーナバスは、身体を老人のものから老龍へと戻す。
鱗は不揃いになり、瞼は重たそうに閉じたまま、蒼穹を駆け抜けた大翼も骨と皮だけの見かけ倒し。
息をするたびに、ぷしゅー…と鼻息が空気を震わす。
龍の姿に矜持を抱く同胞から見れば、醜く老いさらばえたと言われても仕方のない生き物だった。]
(………キッカケは。)
[ゆるゆるとまどろむ中で、思い出すのはこの途方もない寿命を手に入れたキッカケだ。
龍族は生まれついて長寿の種族である。
それは、神の寵愛とも受け取れる強い生命力からであったり、魔力の強さ、或いはその生命をどのように長引かせるかの方法にも依る。
バーナバスは…かつては漆黒龍のバルナと名乗っていた龍は、己が実に二万七千三百四十九年も生きることになるとは思っても見なかっただろう。その正確な年月さえ本人は記憶していないだろうけれど。]
(50) 2013/11/23(Sat) 04時半頃