嫌なら嫌で、……良いのなら、良いで、
……おまえが、そんなだから。
[――こうして離れられないままなのだ、と。
身勝手な理屈で、責めるように吐き出した言葉は、けれど震えて掠れた。
朱くなった目元を見ながら肩に手を当てて、引き寄せていた身体を、再び押しやって。]
――だから僕までもが、こんなところまで来たんだろ。
[泣きそうな声に反して、瞳はすっかり乾いていたけれど。
喉の奥からこみ上げる惨めな言葉を、無理やり堰き止めるように、一度噛み締めた唇を、弟の歪んだ口元へと寄せる。
先の口付けの延長と考えれば、児戯めいても取れるそれは、けれど今の自分達がするには、あまりに歪だろう。
受け入れられるとは、はなから思っていなかった。
例えば不意をついたのならば、その唇の端に噛み付くことくらいはできただろうけれど。
――それでももしかしたらその感触は、初めてのものではなかったかもしれない。
けして自分を受け入れることのない弟を、唯一の捌け口を、なんとか繋ぎ止めようと。
その為ならきっと、何だってできたから。]
(48) 2014/07/04(Fri) 22時頃