―深夜の森 >>38―
……それがあなたの「巡礼」なのですね。
[「かれ」が巨木の下に、トニーの遺体を並べてゆく。
それは初めて「かれ」を見た後に、森の中に「転がっていた」遺体――即ちソフィアのことであるが――とまるで同じ様式で並べられてゆく。]
無理に教えていただきたいとは思いません。
ですが、興味を抱いているのも確かなことです。
ここが何処で、この森が何の役割を持ち、そしてあなたが何者であるか。
あなたの巡礼者となった今、私は知ることも可能でしょう。
[仄白い膚に赤黒い染みを纏うだけの「かれ」が、手を広げる。
そこには月の光が届いていないというのに、先ほどよりもずっと強い光を浴びているような心地を、イアンは感じていた。
一歩、また一歩と、「かれ」――そして「月」の信望者となったイアンは、ヒトならざる美をたたえる笑みを浮かべる「かれ」の元へ、迷うことなく近づいてゆく。]
(45) 2010/08/10(Tue) 23時半頃