[ばらばらと去って行く人の後には、以前と違って立派な置き土産の山。
狙ってか、そうでないかは測れずとも――恐らく後者だと 熟々抜け目の無い女だと 笑みを崩すことなく考えて。
>>21しゃあしゃあと告げられた挨拶に応えるのは、今ばかりは億劫ではなかった。
――虫の勘か、または自身の深くで気付き出していたか 彼女相手にならば、まだまともに話す事が出来そうだと そう思ったものだから。]
何処でも弾いてるってぇ言っただろ。
陸区から来て、商店街で働く。
この街の大抵の人間と同じさ。
[>>22彼女が動きを止める気配に合わせて 三味線を持ち直しながら、次いでにひと呼吸とばかりに 握った爪は膝の上へ落とす。
顔に掛かった髪を掻き上げて、そうして先まで口に載せていたばかりの言葉に―― “鼠小僧” の名に、再び首を傾げて、頬に影を作った。]
(44) 2015/01/22(Thu) 16時頃